第4話 異様な9尾の白い狐
私は産まれた頃から孤立していた。
本来、白狐族は通常は尾を最大3つまでしか持たない。
しかし、何千年にも一度だけ9尾の子供が産まれてくるという言い伝えがあった。
ある日、森の中にある白狐族の小さな集落で私は9尾を持って産まれた。
9尾を持つ子供が産まれると大災害や異常気象を起こすという言い伝えがあった。
その言い伝えを信じる者たちからは批難の目で見られた。
幸いにも、その他に神からの使者がくるという言い伝えもあったので両親はそれを信じて私を守ってくれた。
それでも、通常は最大3尾しかない白狐族にとって、私は異様そのものだった。
両親以外は私を白い目で見た。
唯一両親以外で私を守り気遣ってくれたのは、族長くらいだった。
しかし、私のせいで大災害が起こったら3人は私を見放すのだろう。
私はそう思った。
しかし、まだ、もう少しだけみんなと笑顔で仲良くいたい。
それが、その言い伝えと3人が私の唯一の救いで希望だった。
しかし、私が一番恐れていたことが起きた。
白狐族の天敵ともいえるブラックキルタイガーが凶暴化し、近くの集落を滅ぼした。
そう情報が来たときはみんな私を睨んだ。
ああ、もうその時が来てしまったの…
私はそう思い、今までの優しい族長や両親の記憶が頭を遮る。
もう、みんなの優しい顔は見られないの…?
私は瞳から溢れそうになる涙を堪え、家に帰った。
数時間経つと族長から私の呼び出しがかかった。
私が族長の前には、今まで笑った顔しかしなかった族長が見たことないような怖い顔で私を睨み、はぁ…とため息をこぼした。
「もっと前からこうするべきだった…」
そう言って軽蔑するかのような目で私を見た。
「……殺れ」
族長がそう言うと、入口から黒い服を着た人が私に襲いかかってきた。
ああ…もう死ぬのか…
私の頭にはもう優しい3人の姿などなかった。
ただ、なんで?という感情だけだった。
もっと生きたい。
─────死にたくない!!!
私はそう思い、出口に駆け出した。
もちろん出口は塞がれていた。
しかし、生まれ持った身体能力で無我夢中に走った。
後ろから数名私を追ってきた者もいた。
ただ振り返る事をしないで私はただ走った。
誰も、白狐族のいないところまで。
「はぁっ…はぁっ…」
数時間走っていただろう。
途中追ってきた奴らを撒いた後も走り続け、何回も足を木の枝などで切り、転びんだ。
私…生きてる…?
助かったんだ…!生きてるんだ…!!!
疲れと安心で身体から力が抜け、動けなくなってしまった。
それから数十分たった。
空は少しオレンジ味がでてきた頃だった。
す草陰からガルルル…と唸り声が聞こえた。
この声はブラックキルタイガーだ。
「っ!!!はっ………!!!」
息と声を殺し立ち去るのを待った。
しかし、願いは虚しくブラックキルタイガーは私の存在に気づき、近づいてきた。
「きゃー!!!!こ、来ないで!!来るな!!」
私が抵抗すればするほど段々と近づいてくる。
しかし、私に抵抗する以外の手段はない。
「ひっ……こ、来ないで…!!」
逃げたいのに、疲れきって動かない身体。
「グルル…!!」
虎が私に噛みつこうとした。
…助けてっ誰かっ!!…
私は死を覚悟した。
しかし、目の前にいたはずの虎は突然この方へ数メートル飛んでいった。
「「え?」」
私が驚きの声をあげると、誰かの声と重なった。
顔をあげると、私と同い年(?)くらいの人間の男性がいた。
かっこいい…。
この人は誰だろう…?
名前を知りたい。
この人の事をもっと知りたい!!
これが、私が人生で始めて誰かを知りたいと思った瞬間だった。
イラストレーターを目指しイラストを極めた俺、なんか異世界転移したんだけど平和で気ままに暮らします!! @nekonohirune
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