第3話 白狐族の少女


俺の膝にうずくまるようにして、すやすやと可愛い寝息をたてて寝ている白い狐耳と9つの尾を持った少女の頭をそっとなでながら俺は思う。






なんでこうなった…?









俺は自分のステータスを見て色々思ったが、考えていても何も始まらないと思い、もう一度森の中を彷徨った。




数時間歩いただろうか、空が少しオレンジ色になっていて、少し休憩しようと思った時、きゃーっ!!!と近くで女性の悲鳴が聞こえた。

「っ!!なんだ!?」

俺はなにがあったんだと思い悲鳴が聞こえた場所へ急いだ。

走っていると木々が開けた場所についた。

そこには15歳位の少女が黒い虎に襲われていた。

少女はブルブルと震えていて動かない。

いや、動けないのだろう。

俺の存在に気づいてない虎は女の子に噛みつこうとした。

虎に向かって俺は力いっぱいに殴った。

すると、虎がキャインッと鳴き木々の方へ吹っ飛んだ。



「「え?」」



俺と少女は驚いた顔をして顔を見合わせた。

虎もさっきの怖さはなくなっていて、首をかしげ目をまんまるにして俺を見つめた。

とりあえず俺は虎を睨んだ。

すると虎は逃げるように去っていった。

虎がもういない事を確認して俺は少女に声をかけた。

「あの…大丈夫…?」

俺の声に驚いたのか、ビクッと身体を震わせてコクコクと頷いた。

「だ、大丈夫…なの…です!!危ないところを救っていただき、ありがとうございます…!!」

少女はニッコリと笑ってお礼を言った。

真っ白な銀髪で気づかなかったが、白いもこもこな耳と9つの尻尾が生えていた。

「その耳と尻尾は…?」

俺が質問すると、少女の耳と尻尾がぺたんとたれて少しくらい顔をした。

「や、やっぱり変…ですよね、白狐族なのに…」

少女がさっきのお礼より何倍も小さい声で言う。

「?何いってんだ!!綺麗だぞ!!それに可愛い!!特にその揺ら揺ら揺れるフサフサでもこもこのその尻尾!!」

俺がそう言うと少女はカァーと顔を赤くした。

「は、初めてそんなこと言われた…です…」

少女はそう言って耳をピクピクと動かし、尻尾をパタパタ動かす。

?なんでこんなに可愛い子に誰も可愛いって言わないんだ…?

こんなに可愛いのに…?

「白銀の風になびく髪に青空のような瞳!!綺麗と可愛いイガイになにがあると言うんだ?」

俺がそう言うと、少女はプシューと音をたてて真っ赤っ赤になってしまった。

「あ…ありが…ござ…ます、あっ、あなたのお名前を教えてもらっても…いい…ですか、?」

少女はそう言って俺の顔を見た。

「俺…?俺は咲島絵空!!絵空って呼んでくれ。お前は?」

俺が聞くと少女は慌てて少し早口で教えてくれた。

「あ…わ、私の名前は…トゥイーディア…トゥイーディア・ハクフォリィ。白狐族です。」

耳まで真っ赤になったトゥイーディアを見て俺は可愛いなと思う。

「トゥイーディアか!!よろしくな!!」

俺がそう言うと、トゥイーディアはさらに顔を赤くしてかすれるような小さな声で言った。

「トゥ……よん……です」

ボソボソと小さな声で話すトゥイーディアの声は少ししか聞こえない。

「ん?どうしたんだ?」

俺が聞くと、トゥイーディアは真っ赤な顔をバッとあげ叫んだ。

「わ、私のことはトゥイーディアではなく、トゥディって呼んでほしいです!!」

俺は今まで小さい声で喋っていたトゥイーディアの初の大声を聞いてポカンと情けない顔で固まってしまった。

「わかった!!トゥディ!!これからよろしくな!!」

俺がそう言うと、トゥディはパァァァと顔を明るくして尻尾をブンブンふった。

「はいっ!!」



それから数時間俺はトゥディに天然水を渡し、一息ついてもらった。

そして恐怖がなくなったあとの安心感か、トゥデイは俺の膝を枕にして眠ってしまった。




そして今に至る。

アナウンスさん、さっきの虎ってなんなんだ?

俺がアナウンスに聞くと、アナウンスはすぐ答えてくれた。

『解: 名称 ブラックキルタイガー。

   特性 大きい体と硬い爪と歯を持つ。

   基本個々で活動している。

   白狐族の天敵。          』

白狐族の天敵…か。

だからトゥデイはあんなに怖がっていたんだな。

でもワンパンで吹っ飛んだぞ?

白狐族はそんなに弱い種族なのか…?

そんな事を考えていると、トゥデイがんん…と言って瞼を半分上げた。

「おはようトゥデイ。もう少し寝るか?」

俺がトゥデイの顔を覗き込んで言うと、トゥデイは顔を真っ赤にした。

「っ!?え、エソラ!?何でここに?!」

トゥデイは尻尾をブンブン振って言う。

「なんでって…トゥデイがここで寝てしまったんだろ…?」

俺がトゥデイにそう伝えると、真っ赤だった顔をさらに真っ赤にした。

「ご、ごめんなさい〜!!!」

そう言ってスッと俺の膝から頭をどける。

「いや?別に迷惑とか思ってねーよ!!」

そう言うと、トゥデイの耳がピクピク動く。

そして数十分、トゥデイの顔が普通の色に戻るまで待った。

「なあ、トゥディ。どうしてトゥディはあんな危ないところに1人でいたんだ?」

俺はトゥディにずっと疑問に思っていた事を聞いた。

するとトゥディの尻尾がピンッと伸びた。

そしてトゥデイは悲しそうに目に涙をためながら話してくれた。

今までトゥディが送ってきた人生を─────






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