第2話 夢じゃない…よな?

俺は数時間あてなく森を彷徨い続けわかったことがある。

1つ目はこれは夢じゃないってこと。

俺は何度も何度も木の根っこに躓いて転んだ。

足からは血が出るわ服は汚れるわ…最悪だ!!

しかし最悪という感情と共に痛いという感覚があった。

その感覚がここは夢の世界ではないと、俺はここで生きているんだと実感させられた。

何度も転ぶたびにそんな事を実感する。

服はボロボロだが、なんとか液タブだけは守り抜く。

液タブは今の俺の命、生きる理由と言っても過言ではない。

2つ目はここが地球ではないってこと。

いわゆる異世界転移というやつだ。

最初は意味がわからんかったけど、なぜかまだ心の片隅では地球のどっかかもしれないって思ってた。

そう願ってた。

彷徨い続けて見た動物は、今まで俺が見てきた動物と少し違っていた。

例えばうさぎ。

ここでの名は知らないが、ここのうさぎはなぜか角が生えている。

角が生えているうさぎなんて聞いたことがない。

次にリス。

俺の見間違えではなければアレは地球ではリスと呼ばれているやつだろう。

見た目は地球と全く同じ。

違ったのは食べ物だ。

なんと俺が見たリスはそこら辺にある石をボリボリ食っていた。

それは美味しそうに。

いや、おかしいだろ。

俺はリスを飼ったことはないがわかる。

普通のリスは石を美味そうに食わないだろー

俺は確信した。

うん。ここ地球じゃないわー

だってリスこんなん食わねぇよ!?


しかし、なぜかあまり違和感を覚えなかった。

逆にこっちの世界のほうがしっくりくるのだ。


森を数時間彷徨い続けた俺は体力の限界が来て近くの丸太に腰をおろした。

「これからどーしよー」

持っているものは液タブと財布、スマホにモバイル充電器くらいだ。

とりあえず液タブを取り出して気分転換にイラストを描くことにした。

なんとこの液タブ、最新の液タブなので太陽光充電なのだ。

少し高いけどこれを買ってよかったー!!

最低7年保証というメーカーの自信作らしい。

「喉乾いたなー」

ポソリと呟くと段々と喉の乾きが実感してくる。

俺は液タブにペットボトル天然水のイラストを描いた。

あのキンッキンに冷えた天然水が飲みてー!!

とイラストを描き終えたあとに思って、伸びをした。

すると突然頭に、よくある車のナビゲーターのような声が響いた。

『固有スキル:イラスト創造を発動しますか?』

こ、固有スキル?イラスト創造?なんだそれ?

俺が疑問に思ったことがわかるのか、ナビゲーターは説明しだす。

『固有スキルとは、この世界における誰でも取得可能なスキルではなく、1人だけが持つオリジナルのスキルです。

イラスト創造とは、固有スキル:イラスト創造を持つ咲島絵空だけが使用できるスキルです。

効果は、スキル保持者:咲島絵空が描いたものが生成されるスキルです。必要魔力は生成するものによって変わります。』

てかお前誰だよ!?

『私は導命神の加護の効果です。』

ドウメイシンノカゴ?なんだそれ?お前の名前か?

『否。私は導命神が咲島絵空に与えた加護による効果です。名前はありません。』

導命神の加護ってのはどんな効果があるんだ?

俺の質問になんでも答えてくれるナビゲーターに俺は色々知りたいことを聞いた。

『導命神の加護の効果は、私のようなものが計算、説明などをするな加護です。』

そ、そうなのか…

ここはどこなんだ?俺はどうして地球じゃないここにいるんだ?

『解:咲島絵空の魂は元はこの世界の魂でしたが、導命神が作業を誤り輪廻転生に少し不具合が起きこの世界からチキュウまで飛ばされていました。

これはチキュウにもこの世界にも多大なる負荷がかかります。導命神はその事に責任を感じ、咲島絵空の願いが一つ叶ったらこの世界に送ろうと計画を立てていました。

そして咲島絵空が念願のエキタブというものを買い願いが叶ったので強制的にこの世界に転移させたということです。』

俺の魂は地球のものではなかった…?

俺はアナウンスによる説明に居ても立っても居られなかった。

『他に質問はありますか?』

もう…大丈夫だ…。

俺がそう念じるとアナウンスは先程の質問をした。

『固有スキル:イラスト創造を発動しますか?』

喉乾いたし…『YES』

そう念じると、マルタの上に突如先程俺が描いたイラストの天然水が現れた。

こ、これって飲んでいいの…?

喉が乾ききっていたため、俺は天然水をゴクゴクと半分くらいを一気に飲んだ。

「普通の…天然水だ…」

味は至って天然水だ。

なんか特別な効果とかあったら面白いんだけどな〜

そんな事を思っていると、ピロンと音がして目の前にゲームでいうステータス画面のようなものが現れた。

うわあ!!なんだよ!!これ!!

『生成物:天然水 効果:魔力回復。』

生成物というのはさっきのイラスト創造で造ったものの事だろう。

しかし、魔力を回復する効果だと!?

自分のステータスを見るにはどうしたらいいんだ…?

「ヤケクソだ!!ステータス!!」

俺がそう叫ぶと、またもやピロンと音がしてさっきより大きいステータス画面がでた。


『名前:咲島絵空 性別:男 :種族人間

 レベル:17 年齢:17


 固有スキル:イラスト創造

 生成物


 天然水


 スキル:言語理解、料理レベル10、全魔法特    

 性、体術レベル10、剣術レベル10、痛覚緩 

 和、スキル熟練度上昇


 耐性:完全状態異常無効、完全精神異常無効、 

 威圧無効、鑑定無効、全魔法耐性


 恩恵:

 導命神の加護

 魔導神の寵愛

 最高神の加護

 魔神の寵愛

 雷神の寵愛              』


自分のステータスを見た俺は少しの間固まっていた。

なんだ…これ!?

加護やら寵愛やらこれってレアなやつなんじゃないの!?

それに完全耐性って…

こっちの世界では普通のことなのか…?

おいアナウンス!!教えてくれ!!


『…よく見ることですね』


やっ、やっぱりそうなのか…?


なんか残念だ…


いや…でも…怪しまれるのも嫌だしな…


俺はその後数十分ずっとその事を考えていた。

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