第12話



 一ヶ月後、小学校、中学校の生徒がみんな校庭に集まっていました。


「おい、小森~、俺の分取ってくれよ」


「なんで、私が取らなくちゃならないのよぉ~~??」


「瑞穂ちゃんに焼き芋取ってもらうなんて10年早いぞぉ」


「言ったな? 江原妹~?」


「悪い~~?」


 学校の裏側は先日まで見事な紅葉を見せていましたが、それも終わりに近づき、たくさんの落ち葉が溜まります。一部はそれを肥料として小学校では畑の肥料にしますが、その残りを校庭で燃やし、小学校の子供達が作ったさつま芋を焼き芋にするのが毎年の恒例行事でした。


「もうすぐ冬支度ですねぇ…」


 さおりが焼けて熱い芋に息をふーふー吹きかけながら山の方を見ました。


「瑞穂ちゃん、ここの冬は長いよ」


「そうだねぇ、スキーしに来たぐらいしかなかったもんなぁ。大変かも知れないけど頑張ってみる」


 学校祭のあと、瑞穂はそれまでとは見違えるようにクラスに溶け込みました。まなみ達から見ても、昔の面影を取り戻した彼女はとても頼もしかったのです。


 中学3年生と言えば、もうすぐに受験が迫ってきています。と言っても四人とも都会に戻る気はしませんでした。だからこのままこの町に残り、隣町の高校にすることをこの前決めていました。


「瑞穂ちゃん、いいの? このままここにいて…?」


 彼女の両親はまだ帰ってきていませんでした。何度か戻ってくるように彼女に連絡もあったようなのですが、瑞穂の決心は固かったようでした。


「私には、今の場所の方がいいのかもしれないと思ってね。こうやっている時間が私には大切だから」


 彼女は、そう言ってしばらくはこの場所に落ち着く事を自分で決めたのです。


「うん……。生意気かも知れないけどね」


 彼女は苦笑しましたが、他の三人は一人で暮らすことになってしまう瑞穂の手助けを買って出ることにしていました。


 あと2,3週間すると山の上の方には雪が降り始めます。スキーのシーズンが始まるまでは、この町もひっそりと静まります。


「そう言えば…、さおりちゃんに初めて会ったのって、今年の冬だったよね…」


「そうですねぇ……。派手に転びましたけど」


 その時のことを思い出したのか、さおりは苦笑いです。


「瑞穂ちゃんもきっと最初は大変だよ、あの雪道は……」


「え~、そんなの酷いの?」


「もう少し待てば分かりますよ」


「そんなぁ~~!」


「あ、そうそう。今日、うちでご飯食べようって言ってたんだっけ? 用意しなくっちゃ。帰るよぉ~!」


「あ、ひどい~。つぐみちゃん待ちなさいよぉ~」


「嫌ですぅ~。そうやって走ると来月大変ですよぉ~?」


 つぐみは瑞穂の声から逃げるように、カバンを持って笑いながら走り出しました。


 そして、その夜、いつもよりも早い初雪がこの町を包んだのでした。

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【過去習作】Girls In The Forest 小林汐希 @aqua_station

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