神獣と人間の関係性、身分差など、現代にも通じるテーマ性

 エミ・クロックが聖女になるまでの経緯と、その後の聖女としての日々を丁寧に描いたファンタジー小説です。

 エミが神獣でありながら、人間と共存したいという強い思いを持って聖女になる姿は感動的でした。一方で、人間から差別的な扱いを受ける苦悩もリアルに描かれています。でも、エミは高貴な心を失わず、神官の問題行動にも真摯に向き合っていく姿勢が素晴らしいと思いました。

 ラリーとの出会いを通して、エミが身分の低い人々の苦しみにも目を向け始めるシーンが印象的でした。二人の関係がどう展開していくのか楽しみです。

 時折コミカルなエミの心の声が挟まれ、重苦しくなりすぎない語り口も好感が持てました。神獣と人間の関係性、身分差など、ファンタジーを通して現代にも通じるテーマが散りばめられている点も作品の魅力だと感じました。

 これからのエミの聖女としての活躍と成長を楽しみにしています。ほっこりとした雰囲気の中にも、しっかりとしたメッセージ性のある素敵な作品だと思います。