五輪 平凡な修羅場 その5
ボクやプラネさんよりも早く夕食を食べ終わり、挙動不審で水を何杯か飲んでから、ようやく井上は口を開いた。
「あー…唯がいない時、ゴールデンウィークの最終日に家に招いた時に聞いたんだ。どうやらプラネさんには探している物があるらしくてそれで流石に野宿させる訳にはいかないから、見つかるまでここに住まわせようと思ったんだ。同棲…ごほっ。居候である唯に言わなかったのは悪いって…思ってるよ。」
一応、女子の端くれであるボクから見ても綺麗な人(座天使?)を野宿なんてさせてたら、ボクはそんな判断を下した愚か者である井上をグーで殴っていたかもしれない。その点だけは井上の事を見直せた。
「…かつて座天使だった私の勘なのですが…ここに来てからガコンと感じたのです。アレはこの地域の何処かに必ずあると。」
一昔前のボクなら座天使のクダリで「…は?」と問い返していたかもしれない。でも…
「…分かった。」
「っ唯。こんな荒唐無稽な話を…信じてくれるのか?」
信じるとか信じないとか関係なく、そういう超常的な存在を肯定しないとボクは…悪魔と言っていた師匠を否定する事になってしまう。
——それは嫌だ。
最後の一欠片のハンバーグを咀嚼して、箸を茶碗に置いた。
「…とにかく。今日からは…ボクの部屋で寝よう……井上が可哀想だから。」
「んえ?」
「い、いいんですか!?」
井上はこんなでも17歳で高校生なんだ。プラネさんの前だから、流石にここ数日は禁欲生活を送って来ているとは思うし…こっちも責任を持つべきだろう。
(…燃やされた井上の秘蔵コレクションの写しはボクのパソコンに保存してあるから…後でこっそりコピーして、部屋に置いておこう。)
勘違いしないで欲しいがボクは変態ではない。当時…部屋に戻って来た時に床にそれが散乱してあってそれはもう驚いた…というか、ドン引いた。どの本を読んでも姿といい、題材があまりにもボクに似た物ばかりだったのだから。
ボクが考えていた計画では新しいゲーミングチェアを買ってもらう為の脅し…いいや、布石として使おうと思っていたのだが…気づいていないフリをして井上にプラネさんの事を一任させた点を考慮して、これでトントンという事にしておこう。ボクは優しいからな。
「……お風呂入って来る。お皿洗いはよろしく…ゲームは後で片付けるからそこに置いておいて。」
「分かったよ。」
「はい!残雪さんの部屋…楽しみです♪」
汗はとっくの昔に乾いているが、プラネさんと遭遇しなければ、ボクはお風呂に入って、夕食を作って、今頃部屋でのんびりと快楽に溺れていた筈なんだ…あ。まだログインボーナスを取ってないじゃないか!?
(急がねば。)
ボクは自分の食べた食器類を持って、2人がいるリビングを去って…台所へ向かった。
……それにだ。
ボクがいると…話せない話題があるんだろう?
座天使さんがやってきた☆ 蠱毒 暦 @yamayama18
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