とある冒険者パーティーの日常

@klo90

第1話 不動居合の話

1.不動居合


ある日のこと

「おいみんな!俺はついにやったぞ!」


訓練上にて突然声を上げたのは四人組のBランクパーティー《究極アルティメット最強無敵のクールなドラゴンスレイヤーズ。魔法少女もいるよ!》のリーダーでドラゴンスレイヤー担当タツヤだ。極東の国の職だというサムライのジョブについておりドラゴンスレイヤーを目指して日々修行している。《アルメリア王国》では珍しい黒髪黒目で顔は見るとイケメンだ。....たぶん...。


ん゙っん゙。と、も、か、く!話を戻す。

ギルドの訓練場で突然声を上げたタツヤに三人の仲間は胡乱げな眼差しを向ける。


「突然どうしたのよタツヤ」


達也に返事をしたのはBランクパーティー《究極アルティメット最強無敵のクールなドラゴンスレイヤーズ。魔法少女もいるよ!》の魔法少女担当アカリ。魔法の深淵を目指す魔道士の一人であり自身を魔法少女だなどと謳うイカれた《狂魔女マッドマジシャン》である。長く伸ばした黒髪を後ろで結び大きな魔女帽を被っている。特徴的な紅い眼は常に怪しく光っており、みるものに不吉な印象を与える。


「ふっふっふ!よくぞ聞いてくれた。なんと..ついに居合が俺達の計画の領域まで到達したのだっ!」

「はぁ?計画って何を言って..「なにっ!それは本当かタツヤ!」


タツヤの言葉を聞いて、胡乱げな眼差しを一転、興奮した様子で真偽を問いかけたのは《究極アルティメット最強無敵のクールなドラゴンスレイヤーズ。魔法少女もいるよ!》の自称クール担当レイジ。黒髪碧眼ですらりと背が高く何よりメガネをかけている←ここ重要。外見は完全にクールイケメンだ。間違いない。たとえ、ジョブは拳で殴り合う武道家でも!殴るしか能のない脳筋でも!外見は完全にクールだ。


「ああ。これまで重点的に鍛え上げてきた第二スキル『しん・居合術』にこの前の遠征の時に進化した第二スキル『しん・抜刀術』、そして俺の固有第三スキル『きわみ・刀剣術』の3つの刀スキルと速度に補正を掛ける第三スキル『きわみ・瞬動』と『きわみ・加速』、風精霊の第二スキル『やがて風に至るつむじ』これらを組み合わせることでついに実現した」

「!ということはついに究極最強無敵のあの計画を実現できる...!」

「その通りだ。ユキ!」


タツヤの言葉を聞いて抑揚を感じない声で呟いたのは《究極アルティメット最強無敵の...以下略》の究極アルティメット最強無敵担当のユキだ。この世界を創造し、治めし神、原初神【エレ・ギャレビデム・ペデス】を崇める狂信徒集団《エレペデス教団》のコスプレをしたエセ神官であり、ジョブは巫女だ。口癖は究極アルティメット最強無敵!究極アルティメット最強無敵になるために生まれ、究極アルティメット最強無敵のことを考えて日々を暮らし、究極アルティメット最強無敵に死ぬ。それがユキだ。究極アルティメット最強無敵な白髪黒目で背は低く常に無表情である。


「まずだが、配役を決めたいと思う。俺は居合をする役で決定しているが...」

「俺の役も決まっているだろう。当然あの役だ!」メガネクイッ

「私も究極アルティメット最強無敵に決まってる。」

「おお、なんだみんなばらけてるじゃないか!よし、それならさっそく...」


タツヤ、レイジ、ユキの三人が意気投合し、話し合いをしていると唯一話についていけなかったアカリが声を上げた。


「ちょっと!三人ともさっきからいったいなんの話をしているの?」

「「「え?」」」


時間が止まった。いや本当に時間が止まったのではない。誰もが一斉に動きを止めてしまったためそう思ってしまっただけだ。この時、三人の心は一つになっていた。すなわち、究極アルティメット最強無敵な言い訳をしてアカリを納得させなければいけない、と。アカリは怒ると怖いのだ。三人とも、どんな言い訳をするかを考え始めた。なお、ここまで0.01秒。過去最強の魔物として記憶に残っているA級魔獣《エレ歴戦の英雄巨人レクスギガント》と戦ったときよりも早く思考が回る。唸れ三人の脳みそ!


「アカリにこの計画について言わなかったか?」

「はぁ?何一つ聞いてないけど?」


まず最初に口を開いたのは脳筋レイジ。メガネをクイッとしながら言った。脳筋らしく疑問に思ったことをすぐに口にすることにより、誰よりも早く動き出すことができた。もっともそれは良い結果を産まなかったようだが...。


「あれ、アカリにつたえていなかったけ...?私の究極アルティメット最強無敵の頭脳はアカリに計画について話したと記憶しているけど?」

「あぁ、俺もユキがアカリに話していたのを覚えているぞ。忘れたのか?」


続くユキの口撃。どうやらユキはレイジの発言を受けて、私は伝えましたけどね、アカリが忘れてるんじゃない?とゴリ押す事ににしたようだ。それを察した、タツヤによるフォロー。ユキだけでなく自分も聞いていましたよといった顔をすることで信憑性を増やす作戦だ。すでにレイジが失敗したことで嘘っぽくなっているため、三回目は無理だとも判断したのだろう。更にこれだけではない。こんな言い訳ではすぐにアカリに切り捨てられてしまうだろう。なのでユキは巫女として


ときを止めた。


一切が動きを止め静寂の中をユキが静かに動きつぶやく。


「第四位階祈祷『静寂の時』」


ユキのジョブは巫女。祀る神は【ガル・シー・ビャレ】。原初神が生み出した神々の末弟。権能と神威かむいの神。ユキはその寵愛を受けし、愛子であり、祈りを捧げ人々と神をつなげる神官である。ユキの祈祷により世界のときは静まり返りユキだけの静寂の時間が訪れる


...はずだった。


ぎょロリ


アカリの記憶を捏造し、危機を回避しようとユキがアカリに近づいた時アカリの眼が音を立てて動きユキを睨んだ。そのぎょロリという音は静寂の中よく響き続いて、ゆっくりとアカリが口を開いた。


「《凝視の魔眼》。真実を見抜くという妖精たちの血をふんだんに使って変質させたこの眼はいかなる欺瞞も見破るわ。ユキ、迂闊だったわね」


驚いて声が出ないユキは口を数回パクパクさせたあと怯えた様子で言った。


「こ、これには究極アルティメット最強無敵な事情があって..。だから..えっと..ね?あの..えっと」


動揺して言葉が続かないユキをみてアカリはため息をつくと膨大な魔力を込めて魔法を放った。


「《解呪ディスペル》」


魔法は強大な祈祷の力を打ち破り世界が静寂から音を取り戻した。何があったかを察して手を顔に当て上を向くタツヤと時間停止にすら気づいていないレイジを見てもう一度ため息をついてからアカリは言った。


「別にそんなに怒ってはないわよ。ユキが時間まで止めるから呆れちゃったし」

「ほんと...?」


アカリの言葉に恐怖で少し涙目になったユキが不安そうに聞いた。無表情キャラから庇護欲をそそる幼女きゃらにキャラチェンジだ。


「ええ。でも計画ってなんのことなのかちゃんと教えてもらうわよ。ねぇ、タツヤ、レイジ」

「あ、あぁ!もちろんだ教えてやるとも。うん。当然」

「お、おう。タツヤの言うとおりだ。」メガネクイッ


アカリはユキに向けて優しく言葉を放ったあとに二人に向けて鋭い声を上げる。それにタツヤはホッとした様子でうなずき。レイジは何があったのかをよく理解しないままメガネをクイッとする。

ユキが落ち着くのを見計らってタツヤは口を開いた。


「よし、せっかくならアカリに見せてやろうではないか!俺達の計画をな!」

「見せる?」

「行くぞ二人とも!配置につけ」

「え?何するつもり?」


困惑するアカリをおいて、タツヤの合図でレイジとユキは壁にもたれかかって並んだ。タツヤは練習用のマネキンの前で腰にさした刀に両手を当てて構えた。ちなみにマネキンを真剣で切ると罰金である。


「《不動居合ふどういあい》」


瞬間、タツヤは何もしていないのにも関わらずマネキンはサイコロステーキのようにばらばらになった。否、実際にはタツヤが見えないほど早く居合を抜いたのだ。それをみたレイジとユキは言った。


「レイジ見えた?」

「ああ。恐ろしく早い居合。俺でなきゃ見逃しちゃうがおそらく30回ほど切ったな」

「うん。彼、けっこう強そう。今回は楽しくなりそうだね」


一連のやり取りを見ていたアカリは言った。


「いや、これがやりたかっただけかい!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

とある冒険者パーティーの日常 @klo90

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ