キメラちゃんのはじめてのおつかい

セレンとセシウム

キメラちゃんのはじめてのおつかい

 キメラちゃんは、錬金術師によって造られたモンスターの女の子。

 頭には、ライオンのたてがみ。

 腕は、ナマケモノ。

 背中には、鷲の翼。

 尻尾は鮫。

 脚は、黒い馬。

 異形な姿をしついるが、これでも可愛い美少女である。


 キメラちゃんが三歳と三ヶ月を迎えた頃。

 赤いレンガの家の中で、熊のぬいぐるみで遊んでいた時のこと。

「キメラちゃーん! 」

 白いロングヘアーをした錬金術師が、袋を持ってやって来た。

 どうやら、キメラちゃんに頼みたいことがあるらしい。

「どうしたのですか? お母様? 」

「この袋には、二百枚の金貨が入っている。この金貨を使って生ハムと米を買ってきてくれ」

「うーん…………」

 キメラちゃんにとってのはじめてのおつかい。

 上手く出来るかどうか、すごく心配な気持ちだった。

 けれど、やってみなくちゃ上手くいかない。

「やります! 」

「ありがとう! 」

 キメラちゃんは、熊のぬいぐるみを緑のテーブルに置いた。


 魔王城の城下町。

 暗い夜空の下で、様々な悪魔達がごった返す町。

 その商店街で、キメラちゃんは揉みくちゃにされていた。

「ぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ……」

 一体、二体、三体、四体、五体。

 キメラちゃんは、何体も悪魔を退けながら、肉屋さん方へ向かっていく。

 十五体、十六体、十七体、十八体、十九体。

「ふうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ……」

 二十体目で、やっとお店に着いた。

 しかし、着いたのは肉屋さん出ない。

「ううん? ふ、『フードマーケットベルゼブブ』? 」

 そう、フードマーケットと言う謎の店がたっていたのだ。

 全く、何の専門かキメラちゃんにはわからない。

「よし! 」

 とにかく、キメラちゃんはフードマーケットへ入って行った。

  

「よかったぁぁぁぁぁぁ。優しい店員さんで…………」

 キメラちゃんは、会計を済ませることが出来た。

 フードマーケットベルゼブブでは、入り口付近にお肉コーナー。

 会計する場所の近くにお米のコーナーがあった。

 買い物になれていないキメラちゃんでも、買いやすい店である。


 おつかいを終えて、二十分。

 キメラちゃんは、赤いレンガの家に戻った。

「おかえり! 」

「ただいまぁ! お母様! 」

 キメラちゃんは、背骨が折れそうなくらい錬金術師をハグ。

 錬金術師は、骨が折れる前にするりとハグをかわした。

 そして、キメラちゃんが持っていた転がせるバッグを覗く。

「どれどれ…………生ハムと米…………確かに入っている。しかし、思っていたのと二倍だなぁ」

「えへへへへ…………どれも半額だったんですよぉ」

「数字もわかるのか! さすが我が娘だ! 」

「ふふ……ありがとうございます! 」

 その後、夕食が生ハム丼の日が一週間も続いた。

 

 

 

 

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