一年生 九月
颯太
「颯太」二十
九月には僕の誕生日があって、誕生月独特の雰囲気が自分の中で漂う。しかし、誕生日は九月三十日にあり、上旬には胸を高鳴らせていたものの、中旬にはもう忘れていた。
僕は時田と誕生日が同じで、それをネタにしてよくふざけあう。とはいえ彼と僕はいわゆる正反対な人間で、例えば僕が午後三時生まれで、時田大地が午前三時生まれである。この例に代表されるように、僕たちは惜しい範囲で少しずつ反対だ。しかしすべてが同じことが仲良くなる条件とも言えないし、それでもいい距離感で付き合いを続けていけているから、このままでもいいと思う。
「颯太」二十一
九月と言えば中秋の名月、というほど日本文化に馴染んではいないが、とにかくこの時期になるとそういうモチーフのCMが大量に放送される。月見と題した卵料理が街中を跋扈し始めるのだ。
もちろん僕もその商品は大好きで、この時期になれば週に一度は食べる。
ところで、僕の友人に料理ができる人がいるのだが、その人は自分のお弁当を自分で作ってくる。その出来は誰もが一目置くほどで、当然僕もその一人だ。
九月某日、彼は喜々とした様子でお弁当の蓋を開けた。何やら、このシーズンにちなんで「月見弁当」を作ってきたらしい。僕も喜々とした様子で弁当の中身を覗く。
しかし、僕の視界には日の丸弁当しか映っていなかった。
「ほら、最近ブラッディムーンがあったじゃん」
そのあと一口いただいたが、質素な米の味は、彼のユーモアと梅干の酸味で満たされていた。
「颯太」二十二
いよいよ誕生日、といっても僕は特にほしいものがなかった。いや、正確にはあったものの、それは数十万円するシンセサイザーで、その値段では僕の予算も、手も足も出なかった。
とはいえ、いやらしい言い方ではあるものの、誕生日とはすなわち、友人や家族から無条件で祝ってもらえる日のことである。特に親しい友人からは、プレゼントをもらえてしまう。友人がくれたものであれば、それこそ無条件でうれしいだろう。(よほど悪いものでない限り。そもそも、僕の友人にそんな人はいないだろう。)
僕は学校への道のりを、久しぶりに心を躍らせながら歩いた。一切いつもと変わらないにもかかわらず。
高校所為活 宇宙(非公式) @utyu-hikoushiki
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