第11話 旅は続く
同じ革袋の水を回し飲みした直後の、神官助手の死。原因を「水」だと想像する者は居なかった。その水も、地面に捨てられたから証拠もない。
「神が、あの神官助手の行いを許さなかっただけですよ」
イリヤはそう言い、わたしもそれでいい。新しい司祭が、もっともらしい理屈をつけてくれるかも知れない。
旅の備品を買い揃えた後で、わたしたちは町を出た。今は、また王都への街道に出るために小道を歩いている。
「あのさ。もうサクヤを、イリヤの妹って言うのを止めた方がいいんじゃない?」
「どうしてですか?」
先を一人で歩いていたイリヤは、不思議そうな顔で振り返る。サクヤは、わたしの左手を握って一緒に歩いてる。
「イリヤの妹だからサクヤも教会の信徒ってことなるんだよ。いっそさ、わたしの娘なら異教徒だから教会の言う悪魔も関係ないよね。魔女の嫌疑かけられても、異教の信徒だよって言えば良いんだし」
「でも、サクヤも都市ウィザルタルで神託を受けましたから・・・」
「悪徳司祭の偽神託は関係ないだろ」
サクヤは奴隷商人に売られそうになって、イリヤも殺されかけた。義理立てする要素なんか何もないだろうに。
「でも、僕は本当に信徒ですし・・・」
「あんたじゃなくて、サクヤだよ?」
「・・・」
口達者なイリヤも反論できない。なのに、納得してない。もしかして、意外と敬虔な信者だったりするのか?
もう、煮え切らないイリヤは無視する。
「サクヤは、今日からわたしの娘にするから!」
考えればそれが一番だ。それなら、サクヤが異国人でも異教徒でも誰も気にしないだろう。顔を隠す必要もなくなる。
「あの、この娘を王都へ連れて行くための旅なんです。貴女だって・・・」
「わたしが、何?」
「・・・いつまで・・・一緒にいるのか、わからないじゃないですか?」
何だ・・・なんで、そんなことを言い出す?
「わたしが、あんたたちと離れるわけないだろ。一緒に故郷に帰って3人で暮らすんだから」
「僕みたいな生っ白いのが、女戦士の国に入れて貰えるわけないでしょう」
その可能性はあるな。故郷では男は、長一人しか置かない。長には国中の女を相手にする体力が必須だが・・・イリヤで大丈夫か?
「その時には、わたしがイリヤの故郷へ行くさ。年下のお義母さんとも上手くやれると思うよ。お義母さんも良い人そうだし・・・息子の嫁と孫が同時にできて喜んでくれるよ」
「・・・」
イリヤは黙り、サクヤはわたしとイリヤの顔を見比べてる。
魔女を狩る者~女戦士、放浪の薬師を拾う~ 星羽昴 @subaru_binarystar
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