閉じた扉
あのあと俺は、病院で目を覚ました。
何でも無断欠勤を訝しんで同僚が大家と一緒に部屋を覗いたら死んだように眠っている俺がいたらしい。それから三日間目を覚まさなかったというのだから驚いた。
やはり、向こうと此方では時間の流れが違ったようだ。アイツと話したのはほんの数時間だったのに。
もののついでに湯河原温泉を検索したけれど、当然あんな異世界ではなかったし、着ぐるみで町おこしなんてイベントもやっていなかった。
いまでも、あれは夢だったのかも知れないと思うことがある。手元にアイツの字がびっしり刻まれた原稿用紙がなければ、かも知れないでは済まなかったと思う。
いくつかの検査を経て家に帰ったら、テーブルの上に原稿用紙の束があって、俺は夢だけど夢じゃなかったのだと確信したのだ。
この原稿は、落ち着いたらPDF化して宗介の名で出版社に送ろうと思う。
向こうがどうするかは俺が関われることじゃないし、他人の出来ることといったらそれくらいだ。
物語は結末を迎えた。
異郷の夢は、あれから二度と見なくなった。
俺に異世界への扉を開いてくれていたのは、いつだって宗介だったから。
黄昏の温泉郷 宵宮祀花 @ambrosiaxxx
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます