第14話 大いに実現してしまった順子のささやかな夢

ฟุรุตะ จุนโกะ、فوروتا جونکو、ফুরুতা জুনকো、फुरूता जुंको、فوروتا جونکو、Фурута Жунко、Фурута Дзюнко、후루타 준코、古田顺子、Junko Furuta…。


もうお分かりと思うが、これは「古田順子」の各国語表記だ。

これらどの表記で検索しても、それぞれ順子の生前の写真や事件の概要などがそれぞれの言語で出てくる。


この事件は35年も前の事件なのに日本はおろか世界中で語られるようになってしまった。

今後も伝説のように語られてしまうのであろう。


伝説の中で順子は永遠に17歳の少女のままで、何の罪もないのに悪魔たちの毒牙にかかって命を奪われた悲劇のヒロインとして世界中のいかがわしい者たちのゆがんだ心の中で生き続け、時には彼らのYouTubeやブログの題材にまでされている。

もっとも、宮野、小倉、湊、渡邊の四人の方は悲劇の元凶であり、ヒロインの命を無残に奪った四大悪党として永遠に糾弾されるであろうが。


生前の順子は芸能界に漠然とあこがれていたようだ。

自分の可愛らしさは自他共に認めるところだったから「アイドルになって有名になれたらいいな」と思っていたことだろう。

皮肉にも彼女の願望はさほど強烈ではなかったはずなのに大いに実現してしまった。

自分のことが、これまでの日本の芸能界で一世を風靡したヘタなアイドルなんぞより、ずっと多くの世界中の人間に長きにわたって知られているからだ。


でも、これは決して順子の望んだことではないだろう。

天国にいる順子もこんなことで有名になりたくなかった、と言うはずだ。


もし事件に遭わずに存命だったならば、彼女は現在53歳。


50を越えても年下の男を魅了する美魔女だったかもしれない。


それか完全無欠のおばさんで孫が生まれていたかもしれない。

「こう見えても昔はキレイだったんだよ」とか言って昔を懐かしんでいて、自分のことを昔からおばさんと思っている若い子などに昔の写真を見せたら「今と全然違うじゃん」と驚かれたりなんかして「失礼な子だね」などと顔で笑って、心で「あたしも年をとっちゃった」と落ち込んでたりしてたかもしれない。


でも、その方がずっとよかった。

命を絶たれて永遠に17歳の美少女のまま世界中に知られているより、53歳の何の変哲もないおばさんになって、あと何年かしたら婆さんになっていた方を彼女も選んだはずなのだから。








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

1989年・女子高生コンクリート詰め殺人事件~何の罪もない美少女をさらっていじめ殺した綾瀬の悪魔たち~ 44年の童貞地獄 @komaetarou

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ