第13話 白日の下にさらされた悪魔の所業

事件が発覚したのは全くの偶然だった。


1989年3月29日、宮野裕史は練馬少年鑑別所に収監されて取り調べを受けていた。

宮野はすでに小倉譲と共に昨年11月と12月に起きた婦女暴行やひったくり、衣料品店からの窃盗の容疑で警視庁綾瀬警察署と同庁少年二課に逮捕されており、余罪を追及されていたのである。


捜査員はこの時、ある凶悪事件に宮野がかかわっているとにらんでいた。

それは1988年11月に足立区綾瀬のアパートでシングルマザー(36歳)と息子(7歳)が殺害されて金品が強奪された母子強盗殺人事件である。

この日の取り調べ中、いかにも怪しい宮野に捜査員は自供を引き出そうとカマをかけた。

「おまえ、人を殺しちゃダメじゃないか」と。


「すいません。やりました」


あっさりと認めた宮野だったが、それは捜査員が期待した事件ではなかった。


あ?監禁?いやいや、強盗殺人の話してんだって、綾瀬の。

だから婦女暴行って、いや、今その話じゃなくてだな、女子高生?いやいや、お前が殺したのは36歳の母親と7歳の子供だろが、いい加減にしろよお前…、え?女子高生を殺して、コンクリ詰めにして捨てたって!?


捜査員が予想もしていなかった殺人事件の発覚である。

宮野は埼玉県三郷市の高校生・古田順子を自分たちが殺したことを共犯者の小倉が自供したと勘違いしていたのだ。


やがて小倉の方も自供し、警察が彼らの供述した場所を捜索すると供述通りコンクリが詰まったドラム缶を発見。

綾瀬署に搬入してコンクリートをはがすと中には腐乱した若い女性の遺体、それは変わり果てた順子の姿だった。


翌30日、宮野と小倉は殺人・死体遺棄容疑で逮捕され、同日中に犯行現場となった湊宅を現場検証し、事件にかかわったとして湊伸治、渡邊泰史、湊恒治、中村高次、伊原真一も逮捕される。


この事件は発覚の翌日には報道され、瞬く間に全国民の知ることとなり、衝撃を与えた。

前年に同じく未成年によって起こされた「名古屋アベック殺人事件」同様、もはや少年犯罪は凶悪さの点で成人のものと変わらないことを改めて知らしめたのだ。


17歳という若さで命を奪われた順子の葬儀は4月2日、三郷市の実家で行われた。

接する者すべてに愛された少女の死を両親はじめ肉親はもちろん、高校の同級生や友人、近所の人々は大いに悲しみ、葬儀は慟哭の声に満ちた悲しいものとなる。

順子が通っていた八潮南高校の同級生は「校長先生が特別に卒業証書を書いてくれました…これで3年8組47名全員卒業できました…」と泣いてしゃくりあげながら弔辞を読んでいた。

だが、順子の遺体は生前の虐待により、両親でも判別できなかったほどあまりにもむごたらしかったために棺にはしっかり釘が打たれていたという。


当然、犯人たちへの怒りも抑えられるものではない。

順子の父親は「犯人を殺してやりたい」と悲憤やるかたない様子だったし、母親は「犯人を死刑にしてください」の一点張りで、愛娘を無残な方法で奪われたこの母親は後に精神科に通院するほど憔悴することになる。

彼女を知る者は皆、「なんであんな優しくていい子を殺すんだ!?」と犯人への怒りをぶちまけていた。


そして肉親と同じくらいその死を悲しんだ順子の彼氏は葬式には姿を見せず、この世で最も愛した女の死体が捨てられていた江東区若洲の埋め立て地に来て号泣していた。


順子…助けられなくてごめん!オレに男の資格はない…、最愛のお前を守れなかった…。


彼も独自に順子を探していたのだ。

そして男なら、自分の女を殺した奴を生かしておけないはずだ。


アイツらは人間じゃない!!!仇はぜったいにとってやる!!


彼は後に週刊誌の取材にそう答えていたという。


そう、人間じゃない。


宮野は控訴審までもつれこんで懲役20年の判決、小倉は懲役5年以上10年以下の不定期刑、湊は懲役5年以上9年以下の不定期刑、渡邊は懲役5年以上7年以下の不定期刑となったが、異様に軽い判決と言わざるを得ない。

これでは犯罪を奨励しているようなものだ。


おまけに反省も全くしていなかった。


宮野は出所後の2013年1月頃に振り込め詐欺事件を起こして逮捕され、後に不起訴処分となっているが、口がうまい男ゆえにうまく立ち回ったのであろう。

顔も頭も悪い小倉は出所後の2004年、33歳の時に知人を暴行して監禁する事件を起こして懲役4年の実刑判決を受けていた。

しかも小倉は自身の犯したコンクリ詰め事件をそこらじゅうで自慢しており、「あの事件の主犯は実はオレなんだよ」とか「最初は嫌がったりして面白かったけどよ、最後の方は何も反応しなかったから面白くなかったぜ」などと吹聴してたという。

湊にいたっては2018年8月19日に埼玉県川口市内の路上で通行人男性相手に殺人未遂事件を起こし、裁判中には法廷で暴れた。

それなのに下されたのは懲役1年6月、保護観察付き執行猶予3年という異様に軽い判決。

また何らかの罪を犯す可能性が大な奴なのに現在もう野に放たれているのだ。


もはや殺処分するしかない奴らだ。

出所後精神に異常をきたし、今のところ人畜無害な渡邊はともかくとして。


だから、宮野裕史、小倉譲、湊伸治よ。

いや、今名前を変えて、宮野は横山裕史で、小倉は神作譲か。

特にお前ら三人に私から頼みがある。


今すぐ死んでくれないか?


オレは貴様ら三人がまだ生きていることが気に入らないんだ。

とっとと自殺して地獄へ落ちろ!



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