となりのセイちゃん

タカナシ トーヤ

第1話 再会

中1の夏休みの終わり。


両親の仕事の都合で、鮎川澪あゆかわみおと2人の弟は、祖父母の家に預けられた。

5年生の優気ゆうきはおとなしくソファで小説を読み、1年生のさくは活発に家中を走り回っている。



「澪ちゃん、先週から、となりのせいちゃん達も帰ってきてるんよ。覚えてる?」

ばあちゃんが掃除機をかけながら、思い出したように聞いてきた。



「聖ちゃん?あぁ、あの目がおっきい可愛い男の子の兄弟ね。」



最後に聖ちゃん達と会ったのはいつだろう。たしかまだ、聖ちゃんも小学校低学年くらい、聖ちゃんの弟のりゅうちゃんは知っている単語を並べて喋ってるくらいだったかな。みんなでワイワイ遊んで楽しかったっけ。



「うちも孫たちきてるわぁって、笹原さんに連絡しとこうかぁ。」

そう言ってばあちゃんは受話器を手に取った。



「あっら〜!元気な声!竜ちゃんかい。まぁ〜、おっきくなって。ヒサエさん、うちにもね、今ちょうど孫たちきてるから、よかったら聖ちゃんと竜ちゃんも遊びにおいで。うんうん、いやいや、いいのよ、手ぶらでいいからね、ほんとに。いやぁ〜!可愛い声!」



よほど竜ちゃんが楽しそうにはしゃいでいるのだろう。ばあちゃんは電話口で歯を見せて笑っている。




聖ちゃんは優気と同じ5年生だったはず。

竜ちゃんは朔よりちっちゃかったはずだから、まだ就学前かな。



ばあちゃんが冷蔵庫から林檎やら苺やらたくさんの果物を出していると、チャイムが鳴った。


「あ、澪ちゃん、聖ちゃん達だわぁ。出て〜?」


「はーい。」


澪がドアを開けると、見知らぬ少年が立っていた。

「あ、どーも。」


その低い声に、澪は一瞬驚いて止まってしまった。


澪のクラスの男子よりひと回りもふた回りも大きな体。

角刈りの髪に凛々しい眉毛。

Tシャツの上からでもわかる厚い胸板。

思春期の中学生みたいなニキビづら



えっ!!!??

これが、あの甲高い声で走り回ってた、おぼっちゃんヘアーの可愛い聖ちゃん!!??



「あ、俺、聖司です。覚えてます?…お久しぶりです。お邪魔します。」

「あっ、うん、久しぶり…」

聖ちゃんはごく自然にばあちゃんちに入ってくる。


「間宮のおばちゃん、おっはよ〜!!久しぶり〜!!」

小さな竜ちゃんがダダダと廊下を走ってばあちゃんに駆け寄っていく。

「あらまぁ〜!!竜ちゃん!!可愛い!!んまぁ〜!!聖ちゃんも、ちょっと見ないうちに、すっかりお兄さんになって!!」


間宮のおばちゃんとは、うちのばあちゃんのことである。

ばあちゃんはしわしわの顔をさらにしわくちゃにして喜んでいる。



ばあちゃんの子ども好きは近所でも有名である。私達がいなくても、普段から近所の子ども達を家に招いてお菓子を振る舞っている。(もちろん、保護者の同意の上でだが)


そんな性格が災いして、近所の、週末いつもひとりで公園にいる子どもの面倒までばあちゃんが見ている始末だ。

この件は、さすがのばあちゃんも市に相談しているらしいが。





私は、聖ちゃんのあまりの変わりようにびっくりして少し緊張してしまっていた。

中学2年とか3年っていわれても、納得してしまいそうな貫禄である。



第二次性徴が早すぎだ。








つづく


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となりのセイちゃん タカナシ トーヤ @takanashi108

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