高校生・大学生の皆、相撲デビューしないか？ 入門者減で将来の存続が危ぶまれる大相撲界を救うべく元力士YouTuberが相撲の魅力を伝えまくる！

第1話

　少子化やスポーツの多様化による相撲人口の減少により近年入門者が激減、

将来の存続が危ぶまれる大相撲界。

　そこで、元力士のYouTuberが若者達に大相撲の魅力を伝え、将来入門したいと

思わせるべく立ち上がった。

　チャンネル名は『nokotte.TV』

　元関脇比治山と、元大関高田谷邦洋（たかだや　くにひろ）【愛称：高田谷くーみん】がお届けする動画配信番組である。

　大相撲の立ち合いの掛け声「はっきよいのこった！」と、大相撲という

競技が未来永劫途絶えず残って欲しいという願いも込めて名付けられたという。

「どうも、比治山です」

「くーみんです。『nokotte.TV』です！　今回は全国の小中学生、高校生や大学生の皆さんに大相撲の魅力をたっぷりお届けしようという企画で、今からでも相撲デビューして将来お相撲さんになりたいなぁっと思ってくれるような番組にしていきたいなっと思います」

「チャンネル登録、高評価、各相撲部屋公式SNSフォローお願いします！」

　この二人は収録のため、とある高校へ。

　放課後のグラウンドや体育館を見て回り、

「部活動が盛んに行われてますね。でも相撲はないんかぁい！」

　高田谷くーみんは苦笑いで突っ込む。

「うちの高校、相撲部はないですよ」

　テニス部員の一人が言う。

「きみ、ええ体格してるやん。相撲やらな勿体ないで。相撲やろうや。

高校出たらぜひ入門しぃ。Fラン行くくらいやったら絶対相撲界の方が

将来安泰やで。十両になれば月収１００万以上やで」

　くーみんの熱心な勧誘に、

「相撲は、全く興味ないですね」

　テニス部員はきっぱりと言う。

「あらららら」

　嘆くくーみん、

「相撲部がある高校なんてほとんど無いもんね。運動部入る高校生は普通、

野球、テニス、サッカー、バスケ、バレー、ラグビー、陸上、水泳、柔道、

剣道あたりを選ぶもんね」

　比治山はこう突っ込んだ。

「相撲じゃ女の子にモテないじゃーん」

　サッカー部員に言われてしまった。

「それ言うやつおるけど、サッカーとかバスケとかやってモテるやつは、

相撲やっててもモテる思うで。俺の顔じゃ相撲以外のスポーツやってても

モテへんかった思うで」

　くーみんは自虐気味に主張する。

　所変わって、相撲部屋の取材へ。

「というわけで、鯵野川部屋へやって来ました。こちらのちゃんこを作ってるお兄さん達の現時点の番付はどこですか？」

　くーみんは、にやけ顔で質問する。

「西三段目１７枚目です」

「東三段目１７枚目です！」

　力士偏差値５５。

「枚数同じかぁ。大相撲の世界では、同じ番付で同じ枚数やと東の方が地位が上やねん。けど、一般的な世界ではそうでない場合もありまして、東を付けることによって

著しく地位が下がっちゃうケース、例えば大阪大は東大、京大に次いで一科と並び

三番目に入るのが難しいとされてる超難関大学やねんけど、東を付けたらFランに……」

「ヤメロオマエ」

「あと、灘高に東付けたら……」

「いいかげんヤメロオマエ」

　突っ込み役、比治山さんの現役時代並の強烈な突っ張りがくーみんに炸裂する。

　一般人なら吹っ飛んで大怪我するほどの威力だ。

「三段目って、Ab〇maでしか映らんから地位は低く見えますけど、力士全体から

すれば三段目の上位は平均よりは上なんすよ。半数近くは序二段以下ですからね。地上波に映る十両以上の地位におるんは、上位十数パー以内のエリート層やねん。大学受験で例えたら、マーチ・関関同立クラス以上やね。さて、もう一人の細いお兄さんにも聞いてみましょう。現時点の番付はどこですか？」

「序ノ口五枚目です」

　力士偏差値３７。

「序ノ口。番付食物連鎖の底辺。アーハッハッハッハ♪」

「ヤメロオマエ」

「僕、本当は横綱や、幕内力士が大勢いる紀伊ヶ濱部屋行きたかったんっすよ。

でも断られちゃって。ここの親方に拾われて」

「そっか。この部屋は関取どころか幕下すら一人もおらへんもんね。鯵野山部屋へ

第一志望で入門したやつ０人説かもな。こんな低レベルなFラン部屋で稽古しても強くなれへんよ」

「ヤメロオマエ」

　くーみんがNG発言をする度に、比治山の強烈な突っ張り突っ込み。

「ただね、関取が大勢いるから親方の育成能力が凄いってわけでもないからね。

入門時点ですでに関取の実力がある学生相撲で実績のある子達をスカウトしてるだけやろってパターン。そういう部屋の親方は大学受験に例えたら指定校推薦枠多く

とって一般偏差値吊り上げてる大学の学長みたいなズルやからね。どこの部屋とは

言わんがおまえの指導力のおかげじゃないからな、淡路島みたいな形の中途半端な

禿げのズル親方」

「ヤメロオマエ」

　またしても突っ張り突っ込み。

「この部屋は、ちゃんこだけは素晴らしい出来ですね。高級レストランで出しても通用するよ。俺が現役の時所属してた大武田部屋のちゃんこなんて、くそ不味かったからね」

　くーみんは図々しくちゃんこまでいただいてしまうも、絶賛はしているようだ。

「このちゃんこ、僕が作りました」

　鯵野山部屋所属の若手力士が名乗り出る。

「きみの四股名と今の番付教えてもらっていいですか？」

　くーみんが問いかけると、

「広島県出身の安芸宮島と申しまして、東序二段二十五枚目です」

　その力士は朗らかな表情で答えた。

「序二段が作った単純なちゃんこでした」

「ヤメロオマエ、オイ」

　ともあれ、続いてはとある私立大学へ。

「相撲部主将、学生横綱さんにお越し下さいました」

　くーみんは楽し気に紹介する。

　横綱、力士偏差値６０。アマチュア補正－２０。

「学生横綱は、大相撲の世界やと幕下相当、日東駒専・産近甲龍から地方国立大レベルって評価されてるねん。大相撲の横綱ととアマチュアの横綱との差って、同じ偏差値の私文と国公立理系との差よりも遥かに大きいよ。大相撲の横綱は力士偏差値８０以上やね。大関と横綱、番付一枚だけの差やけど全然違うよ。京大経済学部と東大理Ⅲくらい圧倒的な差があるよ。ちなみにお兄さんはこの大学、一般で入られましたか？」

「スポーツ推薦っす。高校時代の相撲部の実績で」

「やっぱスポ薦かぁい！　帰れ！　一般で受けろ。実績に甘えんな！」

　指定校、AO、付属上がりといった推薦入試は甘え、という持論な

くーみんらしい突っ込みだ。

「一般じゃ絶対合格無理っす」

　学生横綱は微笑み顔。

「きみも今後幕下付出で番付ロンダして、先に入門した中卒や高卒の三段目以下の

子達を後輩やのに先輩面してこき使うつもりやろ？　年上年下、先輩後輩学歴

関係なく番付が上の奴が偉いって価値観の視野の非常に狭い世界やからね」

「いや、ぼくはプロには行かないんで。高校の教師になります」

「そりゃ立派やん。Fラン行こうとしてる子おったらぜひとも相撲界に

入門させてや」

　くーみんの冗談とも本気ともとれるお願いである。

　　　協力してくれたみなさん、ありがとうございました！

　　　※インタビューは事前にご理解頂いた方のみに行っております。

　　　日本相撲協会、ならびに各相撲部屋とは一切関係ございません。

くーみん「今回取材した高校や大学の運動部の子達、相撲やったら伸びそうな

子もたくさんいましたね」

比治山「そうですね。絶対相撲の方が素質あるだろって子も中にはいましたね。

一つの学校だけでこれだけ見つかるんだから、全国には数え切れないほどの

逸材が眠ってるってことですね。この番組見て学生さん達、ぜひとも

どんどん入門して欲しいですね。もちろんスポーツ経験０でも大歓迎。今や

体格審査も無くなって誰でも入れますんで。チャンネル登録、高評価、各相撲部屋

公式SNSフォローお願いします！」

「「グッバーイ」」

　二人はそう締めくくり、収録を終えた。

　後日。

「おまえら、大相撲の魅力を伝える番組のはずなのに、なんで学歴評価番組みたいに

なっとるんだ？」

「いやぁ、なんかノリでそうなっちゃいまして。高校生、大学生には

ウケるかなっと。すっ、すみません」

「こんなもんで大相撲の魅力が伝わるとでも思っとるのか！　それから、

この動画の禿げのズル親方とは、わしのことを言ってるんか！」

「いえいえ。とっ、とんでもございません」

　くーみん、編集された動画を見た元横綱の親方から厳しく叱責され、

動画は没にされ一般公開されることはなかったのであった。

　ちなみにくーみんが本名の高田谷邦洋で以前から出演し、相撲初心者のための

おススメトレーニングルートなどを紹介している相撲塾チャンネルは、

相撲をしない人にも役立つと多くの人々から大好評だそうだ。