第41話

彼女は目元を覆い隠す黒い布を上にずらした。

彼女の瞳が影明の体を見渡すとその片腕を確認する。


「…その腕は、魑魅魍魎の腕、だったな」


黒色に変色している影明の腕を指摘されたことで影明は自分の手をあげた。


「あ、はい…なぜか、俺の意思によって動きます…ただ、暴れないか、少し危険かと思います」


今はまだ影明の意思を汲んで動かすことができる。

だけどこの腕は結局は化け物の血肉でできた腕だった。

今は制御できているつもりかもしれないが下手をすれば魑魅魍魎が暴走してしまう可能性も捨てきれなかった。


「ふむ…貴様の腕は、実の所だな」


しかし彼女は影明の腕を見ながらその腕の原因を話した。


「貴様の体内に魑魅魍魎が入り込んだ時、気絶をした、その時に、私が貴様の鏡刃を取って、切断面に突き刺したのだ」


魑魅魍魎が影明の体に入り込んでいたのを彼女は見ていたのだろう。

動かない体を無理に動かして影明の元へ赴くと影明の鏡刃を使って影明の切断面に深く突き刺した。

その結果が影明の魑魅魍魍魎と化した腕の原因だ。

彼女の発言に影明は驚いた。


「え…そ、そんな事が?」


影明の驚く姿を尻目に彼女は首を縦に振る。


「あぁ」


なぜそのような真似をしたのか影明に説明を行った。


「鏡刃に魑魅魍魎を封じ込めようとしたがな…結局の所、それは失敗した」


うまくいけば魑魅魍魎を鏡刃に封印できるかもしれない。

使い方としては少し間違っているが少しでも可能性があればと思った彼女の行動だった。


「だが、貴様の腕の中には鏡刃も共に入っている」


その結果が影明の腕が魑魅魍魎になったという現象。


「貴様が魑魅魍魎に喰われずにいるのは、鏡刃がそれを抑え込んでいるかも知れんな」


影明が今も魑魅魍魎に食われずにいるのは彼女が行った行動が功をなしたかもしれない。

影明は自分の手のひらを見つめていた。

自分の考えによって指が自在に動く。

色合いを気にしなければ自分の腕と遜色はない。


「…邪継舘殿、俺のこの腕は…使い物になるのでしょうか?」


影明はこの腕を何とか戦闘に利用できないかと考えていた。


「それはどういう意味だ?」


影明に聞かれて彼女は聞き返した。


「力として、武将級の異能の一つとして、利用できないか、と言う話です」


彼女に聞いてみるがしかし難色を示す。


「それは、私にも分からん、それは貴様がどうにかしろ」


世界は広い。

もしかすれば影明と同じ状況に陥っている人間がいるかもしれない。

しかしそれを教えるのは彼女の役目ではなかった。

自分が知っている情報であれば影明に教えることもできただろうが。

少なくともその役割は影明が行わなければならないことだった。

潔く影明は引き下がる。


「…分かりました」


もしもこの腕が使い物になるのだとすれば。

自分はより強大な力を手に入れることができるかもしれない。

影明の可能性は大きく広がっていた。

そしてそんな影明のことを彼女は自分の役目は終わりだとそう思っていた。


「だが、少なくともこれで、当初の予定は完了したな」


当初の予定。

目的は大きく歪曲してしまったけれど。

味方によっては影明が魑魅魍魎を宿したとも言えるだろう。

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主人公の濃厚な体液を貪りたいヒロインたちは魑魅魍魎の力を宿してる、ヤンデレ、ハーレム、和風ファンタジー 三流木青二斎無一門 @itisyou

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