第179話 ご主人様とのデート
ランキング戦で俺が圧勝したお陰で今では学園内で俺に対して喧嘩を吹っ掛けて来たり、こそこそと聞こえるように悪口を言ったりという事が殆ど消えてなくなった。
そんな雑音など気にしていないし気にならないと思っていたのだが、俺は俺が思っている以上にストレスを感じてしまっていたようだなと改めて実感する。
まるで曇りしか知らない者が青空を見たような、そんな清々しい気分を今味わえている。
それでも俺の耳や目が届かない所はドーピングだの魔道具などで勝てただけでルール違反だなんだと話しているのだろうが、それらを俺が認知できない場所で盛り上がっていたのであれば、それは勝手にすればいい。
とりあえず言える事は、不正だろうと何だろうと今の俺に喧嘩を売っても勝てないと周囲が判断して怖気づいたという事なのだろう。
こんな事であればもう少し早く周囲に俺の実力を知らしめておくべきだったなと少しばかり後悔するのだが、それはそれで色々と面倒くさい問題が起きていた可能性も高いだろう。
それこそオリヴィアとの婚約破棄も俺が自身の能力を隠していたからこそだと思えば、初手能力を隠すという判断は間違いでは無かったのだろう。
もしオリヴィアとの婚約破棄ができていなかった場合を考えると、それだけで鬱になりそうなので、この結果だけみても俺からすればかなりのプラスである。
ただ、それが最善かどうかの問題でしかなく今現在上手くいっており『正体を隠す』という一手が悪手ではないのであればそれで良いだろう。
考えた所で答えが分かる訳でもない問題にいつまでも『あーだったら。こーだったら』と悩むのもバカらしい。
「よし、ヨハンナッ!!」
「は、はいっ!! 何でしょうかっ!? ご主人様っ!!」
「学園を抜けだして城下町を散策しようかっ!!」
「えぇっ!? 試合は見なくてもよろしいのでしょうかっ!?(わ、私は……その、ご主人様と一緒にデ、デートできるのは、その、物凄く嬉しいのだけれども……あの、その……それはあくまでも私がそうしたいというだけで、トーナメント戦を観戦していた方がご主人様のプラスになるのであれば……でもでも、ご主人様とのデート……もう一生こんなチャンスが私ごときに巡って来るとは思えないし……い、一体どうすればっ!?)」
なのでこんな気分のいい日は外に出て散策するにはうってつけだろうと思った俺はヨハンナに『いまから城下町を散策しよう』と言うと、ヨハンナは俺の提案に驚いたのか目を丸くして固まったあと、ぶつぶつと顔を真っ赤にしながら独り言を言い始めるではないか。
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