12
夏休みに入って早々昼夜逆転してしまった。
ネッ友と通話を繋げながらインクをばら撒いていたわけだが、何にも縛られることなくゲームが出来るというのは最高だった。
そう、今日までは。
というか、今日が嫌な日とかではない。
秋保との勉強会の日だから。
ただ、何が嫌かって……。
「まっぶし……」
「呆れた……」
いつもの集合場所。
陽射しがきっつい……。
「ゲームばっかしてるせいでしょう……?」
「言い返せねぇ……」
「ゲームってそんなに楽しいの?」
「やったことねぇの?」
「うーん……、ボードゲームとかなら……」
「リア充だぁ……」
ボードゲームとかリアルに友達いないとできないじゃん。
いや、別に友達がいないってわけじゃないけど、男がやるゲームなんて基本はネトゲとかだしなー。
ボードゲームとか何かしらのパーティーくらいでしかやらねぇよ。
「じゃあ、今度富樫君がやってるゲームやらせてよ?」
「どこで?」
「え、そりゃあ……、あっ」
秋保ってたまに考えなしで言うからなー。
心臓に悪いんよ。
平静を保ってはいるが、心臓バックバク。
そして、いつも俺に指摘されて顔真っ赤にするの。
これがめっちゃ可愛いんだ。
小動物感溢れてるわぁぁ……。
「その……、要相談で……」
「お、おう」
いつもなら冗談って言うとこじゃん?!
なんか今日はグイグイ来るなぁ……。
もしかして脈ありですか!?
「とりあえず、暑いし図書館行こうぜ。途中でアイス屋あったよな?」
「あるけど、寄っての?」
「久々に食いたい」
というわけでやってきましたアイス屋。
今日は母さんにお小遣いをもらっているので3段重ねにしてやるぜ!
「スモールサイズ、ワッフルコーン、ポッピングシャワーでお願いします」
秋保は考える素振りなく、注文した。
俺はまだメニューを見ているというのに……。
「富樫君、フレーバー決まった?」
「ふ、ふれーばー?」
「……アイスのことよ」
ア、アイスのことフレーバーっていうの?!
女子って色んな単語知っててすごいわぁ……。
って感心してる場合じゃねぇや。
「えっと、チョコミントとクッキーアンドクリームのダブルで!」
「コーンとサイズはどうなさいますか?」
「カップとコーンがあるのよ、コーンは……ワッフルでいいわね。えっと、ワッフルコーン、レギュラーのダブルでお願いします」
「畏まりました。お会計は?」
秋保がバックから財布と取りだそうとするが、それよりも先に俺が出る。
「一緒で」
「え、別々でいいわよ」
「アイスくらいは奢るよ」
「あ、ありがとう……」
というわけで、お会計を済ませる。
あとはアイスが積み重なってくのを見て待つ。
秋保の頼んだポッピングシャワー?っておいしいのかな?
「チョイスは男の子って感じね……」
「チョコミント苦手なタイプ?」
「私はそんなに。結衣は苦手みたい。歯磨き粉みたいで苦手って言ってたわ」
「あー、苦手な人ってよく歯磨き粉に例えるよなー」
久々に食べるアイス美味いわー。
贅沢してる気分になれる。
あと、ワッフルコーン?も美味い。
コーンって手に持つ生地の部分のことなのね。
「ねぇ、そのクッキーアンドクリーム一口頂戴?」
「ん、いいよ。はい、あーん」
「……あーん」
いやー、無難に美味いよなー。
ミルクの濃厚さ、クッキーの触感とか。
The王道って感じ。
その点、チョコミントって一部では邪道扱いよなー。
「もしよかったら、秋保のも一口くれよ。ちょっと味が気になるわ」
「え、ええ、いいわよ。……あーん」
差し出されたスプーンのアイスを食べる。
最初はただのミントとチョコ風味かと思ったら口の中で弾ける何かに衝撃を受けた。
「うっま……」
「ポップロックキャンディーが口の中で弾けて美味しいでしょう?」
「ポップ……なんだって?」
「ポップロックキャンディー!なんでそんなに横文字に弱いのよ……」
いやいやいや、横文字ってむずいじゃん!
男は漢字のほうが得意なの!
厨二心をくすぐるかっこいい漢字が好きなの!
まぁ、一部界隈では横文字の学習も必須ではあるけど……。
でも、女子のはこう、オシャレっぽい横文字であって、男はかっこいい系であってだな……!
「呆れた……。アイス溶けちゃうから早く食べたほうがいいわよ?」
「それもそうだな!まぁ歩きながらでいいだろ、図書館向かおうぜ」
「溢さないようにしてね……?」
「そこまでドジはしねぇよ!」
店内を出て、図書館へ向かう。
集合したのは1時ほど。
今からどんどん暑くなるのを忘れていた。
「ベタベタ……」
「だから溶けるって言ったじゃない……」
溶けだしたアイスの救助をしたが、間に合わず、手にベットリついてしまった。
調子乗ってワッフルばっか食ってる場合じゃなかったわ。
「トイレで手を洗ってきなさい、場所取っておくから……」
「すいません……」
俺は図書館に着くなり、トイレに直行した。
ついでに用を足し、館内で秋保をさがすが、すぐに見つかる。
だって、一か所だけやけに視線が集まってるんだもの。
その先にいるのは決まって秋保である。
「おまたせ」
「じゃあ宿題消化しちゃいましょうか」
「それもそうだな」
というわけで課題のワークを終わらせるべく、鞄からノートと筆箱を取り出した。
30分くらい集中した頃、秋保がうなり声を上げる。
「ここなんだっけ……」
数学のワークをやってるらしい。
俺は自分のワークから秋保のワークに視線を移す。
「あ、そこは解の公式から当てはめて……」
「あ、解の公式を使えばいいのね……。できた」
「あと、問4凡ミスしてるよ」
「え?……あ、プラスとマイナス間違ってるわ」
去年の俺も同じようなミス連発したもんなー。
解の公式とか覚えらんなかったもん。
「……富樫君って地味に勉強出来る?」
「地味にとは失礼な、理系ならだいぶ。文系はちょっと苦手かも。あと、俺は去年習ってる部分だから……」
「寧ろ去年の勉強したこと覚えてるの?」
「……たしかに、なんでおぼえてるんだろうか。俺って天才かっ?!」
そう思うと、俺って頭いい方じゃね?
要領もよくて、勉強も出来てコミュ力高い。
なんでモテねぇんだ?
「富樫君がバカでよかったわ」
「なんだと!バカとは失礼な!」
「静かにしてっ、ここ図書館なのよ……」
少しはしゃいでしまったようだ。
周りからの視線が痛い……。
「……でも、そのバカさが好きになったのかもね」
「なんか言ったか?」
「いえ、なんでもないわ。ほら、進めるわよ」
「あいよ」
なんて言ったんだろうか?
もし、俺が鈍感系主人公だったら、重要なことを聞いてなかった気がするけど。
でも、図書館の静けさで聞こえないんだから相当な小声よなー。
親友たちに任せてナンパさせたら余ったのが美少女なんだけど?! ペンネーム @noa3189
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