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※日曜更新分が3話分あるので、最新話から飛んできた人は注意してください。
校長の長い話が子守歌のように感じる終業式。
今日で1学期が終わるわけだ。
脳内で悪魔と天使がささやき合っている。
天『寝ちゃえよ』
悪『寝ちゃっても仕方ないですね……』
天使さん、あなた本当は悪魔なんじゃないですか……?
結局、何を言っていたのか分からないが、終業式が終わった。
教室へ戻り、担任に夏休みの間の注意ごとを説明されるが、クラスの雰囲気はすでに休み気分。
誰一人聞いちゃいない。
「はーい、富樫だけ居残りな~」
「なんでっ?!」
『任せたぞ、富樫!!』
「ふざけんな、てめぇら!」
がっはっはー!と笑いが上がる。
溜息を吐く。
ノリが良すぎるのも困りごとだ……。
「いやー、わりぃな。冗談じゃねぇんだわ」
「まじ?」
「マジ」
「えぇ……」
「てことで、お前らは問題児が多い。問題は起こしても警察沙汰はやめろよー。面倒ごとは勘弁だからなー」
先生の本音が漏れたとこで授業終わりのチャイムが鳴った。
残るはショートホームルームだが、ほとんどさっきの授業内でやっている。
ほとんどの生徒がバッグを持って帰ろうとする。
「じゃ、せんこー夏休み明けに会おう」
「宿題やってこいよー」
一番近い位置に居た不良柄の生徒が挨拶をして帰っていく。
それに続いて帰っていく生徒。
俺の横を通り過ぎるやつも肩を叩いてくる。
「がんばっ」
「ふざけんなぁぁ!」
「じゃあな!」
そして1分ほどで教室から人が消えた。
残っているのは俺と先生。
「帰んないのか?」
「せんせーが居残りって言ってたので」
「嘘に決まってるだろ?それとも何か、やましいことでもあってバレたと思ったのか?」
「なわけないじゃないっすか~。達樹じゃないんすから~」
というわけでバッグを持って帰ろうと席を立つ。
先生の横を通り、教室を出ようとすると先生に声を掛けられる。
「そういや~。聞いた話だと富樫に彼女ができた~とか聞こえてきたなぁ?」
こいつぅ、それが用件だな!
35にもなって結婚願望あるのに全く女っ気がないって悩んでるもんなぁ!
先日合コンした女にドタキャンされて逃げられたって噂が校内で広まってるくらいだからな!
「何言ってんすか~、俺、彼女いないっすよ~?」
嘘は言ってない。
だってまだ友達だもの。
「そうか~、夏休みに何かあったら報告してくれよ~?」
「報告したらなにかあるんですか?」
「そりゃあ、課題をたくさん用意してやるよ~」
ドス黒い雰囲気が滲みだしてやがるっ!
他にも女が出来そうな生徒が……いなそぉ……。
「というわけで、先生は学校にほぼいるから報告頼むぞ☆」
「……さよなら先生!!」
「逃げるなぁぁ!」
ノリがいい先生である。
35で彼女のかの字すらないのが不思議である。
ビール腹じゃなければなぁ……。
逃げるように階段を降りていき、下駄箱で靴に履き替える。
様々な生徒が帰っている中、一人土手沿いを歩いて駅に向かう。
スマホを触って電車が来るのを待つ。
適当にゲームをしていると、秋保から連絡が届いた。
『学校終わりました?』
急にどうしたんだろうか?
既読を付けて返信しようとフリック入力している最中に続けて通知が届く。
『もし暇だったらお昼行きませんか?』
「お金は……2000円ギリギリあるな……」
秋保に了承の連絡を入れる。
集合場所はいつもの広場。
自宅を通り越すので俺は直行で向かう。
30分くらい電車で揺られ、目的地へ。
制服で向かうのもナンパした日以来である。
なぜかなつかしさすら感じていた。
「さて、どこでまってれば……」
着いた旨を連絡しようとスマホを取り出そうとしたとき、チラッと視界に入った。
制服姿の秋保が。
「わお……」
黒を基調とした制服。
そういえば、ナンパした日も制服だったけど、そんなことに目が行かないほど緊張してたし。
改めてみると、かなり高校生って感じである。
「あ、富樫君、こっちよ」
「またせたか?」
「ちょっとだけ待ったかしら。まぁ私の方が近いのでその差でしかないけど」
「じゃあ許してくれ」
「特別よ?」
そんなんで自然と手を繋いで広場から離れていく。
あの水族館以降、秋保と手を繋ぐようになった。
最初は秋保から手を差し出してきてちたが、今ではどちらからともなくって感じ。
「何食べたいんだ?」
「ラーメンを食べたくて。今日両親が家に居ないからお昼代だけ渡されてるのよ。二人も今日は予定あるってさっさと帰っていったし……」
「なるほど、それで暇そうな俺を誘ったと?」
「そいういことよ、何か用事でもあったかしら?」
特にないんだよな~。
彰人も達樹もさっさと帰っちゃったし。
てことは、あいつらも会ってるのか?
まぁどうでもいいか~。
あいつらとなんていつでも遊べるしな~。
「あのラーメン屋いきましょ」
「豚骨醤油のとこか?」
「わたし、そこしか行ったことないのよ」
「あいよ、じゃあ行くか」
今度、おいしいラーメン屋紹介してあげようかな。
どこがいいか達樹に聞いてみるかー。
それにしても、秋保と手を繋ぐのも慣れてしまった俺が怖い。
これでまだ付き合ってないんだぜ?
俺だったら勘違いしてしまいそうだ。
ん?なんで俺今気にしてないんだろう?
「……聞いてる?」
「あ、ごめん。考え事してたわ」
「はぁ……。そんなんだから彼女が出来ないのよ?」
「いいんだよ、俺には秋保がいるからな」
秋保と一緒にいることが増えて他の女の子がかすんで見えてな……。
後輩ってとこもポイント高いし。
普段はツンツンしてるのに照れると後輩ムーブしてくるとか最高じゃんか。
「……ばか」
「なんで今罵倒されたの、俺……」
「……バカなんだから。それより、夏休みの課題はそれくらいあるの?って聞いたのよ」
「ああ、結構あったかな~」
各種ワークの範囲、読書感想文と自由研究、夏休みの1日記録みたいなのもある。
少しずつやらないとは思いつつもほぼ最終週にやることになるんだよな~。
「ほとんど量は同じなのね?」
「まぁどこもそんなに変わんないだろ?」
「高校に入って初めての夏休みだから知らないわよ……。提案なのだけど週に1回勉強会しない?どうせ、最終週とかにドタバタしながらやるんでしょう?」
何故バレてる。
男子のほとんどはそうだろうけど、男子と絡みのない秋保がどうしてそれを知っている!?
「そうして知っているのかって顔してるわよ……。柚葉がそういうタイプなのよ」
「あー、なんとなく納得。まぁ勉強会は構わないけど……」
どうせなら海とか行きたいな。
秋保の水着姿とか妄想が捗るわ!
「ジトー……。勉強頑張ったら、一緒に遊びに行ってあげるわよ……」
「まじぃ?!じゃあ今日帰ったら終わらすわ」
「勉強会するってのは変わらないわよ?」
「まぁそれはしゃーないか……」
まぁ帰ってもどうせやらないんだろうけど。
とりあえず、今日のおかずは決まりそう。
ラーメンを食べている間は秋保と夏休みの話をする。
なにをしたいのか、なにをするのか。
決まっているのは俺と勉強会を開くことくらいだそうだ。
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