9「蜂の巣駆除だ。満ち足りねェとなぁ⁈」
新宿歌舞伎町に店を構えるホストクラブ『
VIPルームの高価な革張りソファの中央に座るのは、『
「我らQsPALACEと、闇のカリスマ威虎添翼の永遠の絆を祝して!!」
マイクの音声に続いて、何度目とも知らない乾杯が行われる。キャップを深く被りヘッドホンを首にかけたラッパー風の男が叫んだ。
「おいおい、なんでこうも野郎ばっかなんだよ。美女の一人二人でも連れて来れねーのかー?気が利かないなあ」
「すみませんね
隣のホストがヘラヘラ笑って言った。
「美女なら、ほらここにいるじゃない」
身なりの良いスーツ姿の青年『
「ミブ姉の相手は俺には荷が重ぇよ。……ん?『ニガヨモギ荷が重い』。これ韻踏んでね⁈リリック降りてきたー!」
「だからそれのどこがラップなのよ」
「クチナシちゃん、ゆっくり食べなさい。喉詰まらせるわよ」
クチナシは一瞬
それぞれマイペースな部下に対して、横山は満足げに笑う。
「良いねェ、良いぜお前ら。周りへの配慮が足りてる
「そう言ってくださるのは嬉しいですけどねぇ……」
ため息を吐きつつ笑みを浮かべて、
「みんな馬鹿みたいに盛り上がってるけど、ちゃんと分かってる子は何人いるのかしら?これから戦争が始まるってことを」
「俺とお前ぐらいだろうよ。ここにいる馬鹿どもはどいつもこいつも頭が足りてねェ」
クククッと笑いながら横山は続ける。
「ま、そう言う俺もよくは知らないんだが。『海尻組』ってのはそんなにヤバイのか?」
「ちゃんと分かってるのはあたしだけみたいね」
「あたし達はこれからこの国最大の犯罪組織と敵対するという、とっても新鮮な体験ができるわ」
「そいつぁ最高だ。刺激が満ち足りてる」
「……横山さんならそう言うと思ったわよ」
呆れつつ、彼の胸中に不安は無かった。例えどれだけ巨大な相手に喧嘩を売ったとしても、自分達のボスが負けるなどあり得ないという信頼があったのだ。さらに加えてなにより、血生臭い争い事は彼自身大好物でもあった。
「ま、『海尻組』のことも大事だが……今俺が気になってんのは『蜂』だ」
ハイボールを口にしつつ、横山は言う。
「今月だけで、うちの奴らが何人やられた?」
「十二人。ま、下っ端の雑兵どもですけどね。それとこのクラブのホストちゃんも何人か。例えば、あそこのレンヂちゃんとか……」
壬生狼は、顔に包帯を巻いたまま飲みはしゃぐ輝星レンヂを指した。
「雑兵といえども俺の部下だ。このクラブだって、言っちまえば俺のシマだよなぁ。それはつまり、『蜂』のやつは俺に真っ向から喧嘩を売ってきてるってことになる」
「あたし達が海尻組に対してやってるのと同じことね」
「その通りだ」
ゴキュ、ゴキュと喉を鳴らしてハイボールを一気飲みしてから、乱暴に空のグラスを置く。即座に新しいハイボールが横山の手元に置かれた。再びそれに口をつけつつ、彼は続ける。
「放ってはおけねェよなあ?海尻組とやる前に、邪魔な害虫は駆除しとかねェとなぁ。安心感が足りねェ。駄目だよな?満ち足りねェとなぁ⁈」
「仰るとおり」
静かに同意してから、壬生狼は自身の部下を呼ぶと、何やら耳打ちをした。部下は無言で頷き、部屋から出ていった。
「あたしのできる限りの伝手を使って探ってみますわ」
「ああ。俺も一つ情報源がある。当たってみるさ」
横山はつい先ほどのシェフとの会話を思い出していた。
「有益な情報を持った『探偵』がいるらしいからな」
やがて時間は流れ、宴会はお開きとなる。朝日が登り始めた新宿の街を、
黒いフードで顔を隠した小柄な人物であった。
「……邪魔なんだが。どいてくんね?」
「お前、『
声変わり途中の少年のような、高めのハスキーボイスであった。フードに顔を隠した少年は、さらに続ける。
「あんたに恨みはねェが……これも契約なんでなァ。悪ィが……
そう叫んで少年は
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蛇憑きコンプレックス 繭住懐古 @mayuzumikaiko
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