ルーの物語10

 翌日、ルーはひどい二日酔いになって、ソファでのびていた。


「うう、気持ち悪い。頭がガンガンする」

「今日がお休みの日でよかったね」

 何も胃がうけつけないルーは、シリアルを食べているあたしをとがめるようにチラリと横目で見た。

(僕が朝食を用意しないと、それで済ませる気だな?)

 きっとそう思ってる。あたしは面倒だとコーヒーだけで済ませてしまう。今朝は何か食べているだけでもマシだと思うけど。


「ね、もしかして怒ってる? 昨日のこと」

 あたしは冷たい水と氷の入ったコップを渡した。

「ありがと」

 ひと口飲んだあと、コップを額に当てながら、ため息をついて、

「怒ってるわけがない。今の気分は最悪だけど。賑やかで、楽しい日で、きっとモーリスは喜んでたはずだから。……う、ちょっと、ごめん」

 ルーはそのあと何度もトイレに駆け込んで、復活したのは夜遅くになってからだった。


 ちなみに、その日は父さんも完全に二日酔いになっていて、自分で点滴しながら一日中ずっとダウンしていたらしい。昨日のやりとりについては、途中から記憶があいまいになって、よく覚えていないと言った。


 あたしは直接、診療を手伝うことはできないけれど、卒業したら、何かの形で父さんのクリニックに関われないかと考えている。この前、エヴァも同じようなことを言っていた。


 先日はルーの誕生日で、あたしは言った。

「元気で長生きしてね」

「長生きして、ヨボヨボのおじいちゃんになってもいいの?」

 あたしは笑った。

「大丈夫! あたしが面倒みてあげるから」

「よろしくお願いします」

 彼は笑って、あたしを抱きしめた。



 * * *


 未来には何が待っているのか、誰も知ることができない。

 でも、わからないからこそ、行ってみればいいと思う。

 行ってみればわかるはず。


 誰かを祝福すること、

 みんなに祝福されること。


 誰かを応援すること、

 みんなから応援されること。


 ひとりじゃなくて、一緒に歩く人がいること。


 それはきっと幸せなことに違いないと思う。


 明日は今日に続く未来で、

 人と人が出会い、つながっていく。


 行こう、みんなで。

 明日に続く、その先へ。



*** 外伝3 終 ***

《外伝4へ つづく》

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これからも僕達は 外伝3 春渡夏歩(はるとなほ) @harutonaho

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