第30話 これからも女当主として
あの日以降、私は二度とデーヴィスに再会することはなかった。
秘密裏に処理されたのか、今も生きているのか。それも知らない。例の彼女同様、知る必要はないと思っている。
約束通り、ライトナム侯爵家から慰謝料を受け取った。これでパーティーの件は、綺麗さっぱり終わった。
あの日から、体調に問題もない。ウェヌスレッドは特に心配してくれたけど、私は元気だった。外出しないようにした以外は、いつも通りの日々を過ごしている。屋敷内で当主の仕事を処理する日々。
でも、たまには体を動かさないと調子が出ない気がして、屋敷の庭を散歩したり。ウェヌスレッドも付き合ってくれて、2人でゆっくり話しながら歩いた。
「今日も、いい天気ね」
「そうだね。風もいい感じだ」
隣には、ウェヌスレッドがいる。それだけで幸せを感じる。その時の私は、とても満たされていた。
それから数か月後、無事に赤ん坊を産んだ。男の子だった。
「これから、よろしくね」
出産を無事に終えて、ようやく落ち着いてきた頃。我が子にそう話しかけてみると、ウェヌスレッドに似た顔つきをした男の子が笑ったような気がした。
しっかりと育ってほしい。健康でいてほしい。楽しく生きてほしい。そんな願いを込めて、我が子を抱きしめる。その後、ウェヌスレッドにも抱きかかえてもらった。
「この子が、僕の子。凄いなぁ……」
嬉しそうに優しく抱っこして、感動した様子のウェヌスレッド。しばらくした後、彼は照れたような笑顔を私にも向けてくれた。
「ふふっ、可愛いでしょう?」
「うん! 君に似てる!」
「ウェヌスレッドにも似てるわよ」
2人揃って子どもに夢中になる。こんな幸せな時間を過ごせるなんて、夢みたいだと思う。そして同時に思うのだ。この先何があっても、彼となら乗り越えられるだろうって。
「愛しているわ、ウェヌスレッド」
「僕もだよ、シャロット」
ふと目が合って、言いたくなった。互いに微笑み合う。自然と唇を重ね合った。
さて、この子が大人になるまで私も頑張らないとね。女当主として、カナリニッジ侯爵家の発展に努める。そうして最高の状態で、我が子に受け継ぐのよ。
婚約相手と一緒についてきた幼馴染が、我が物顔で人の屋敷で暮らし、勝手に婚約破棄を告げてきた件について キョウキョウ @kyoukyou
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