カクことヨムことを愛する人たちに、ぜひ、読んでもらいたい

本作は、いじめについてのお話ですが、私たちが生きている中で出会ってしまう、様々な出来事についてお話ししています。
私たちは言葉を使って生きていきます。でも……言葉を使うってどういうことなのでしょうか。そこに立ち返らせてもらえるお話です。


あるものと別のものを区別するからこそ、何かを別のものに喩えられるからこそ、言葉は成立するし、私たちは気持ちを伝え合うための動画になる。
でも、その言葉の性質は「あれはいじめて良いもの/悪いもの」、「人間のように見える動物/人間」といった区別をする道具にもなる。

私たちは言葉という道具を使って生きているが、簡単にこの言葉に支配されてしまう。

哲学者ジョルジュ・アガンベンのアウシュビッツについての発言の中に、「悪」を探そうとすることに意味はあっても「悪人」を探そうとすることは慎むべき、といった趣旨の言葉があったと記憶している。他人を動物にしたり、悪人にしてしまうことで、誰かを容易に、かつ、合理的に排除してしまうからだ。

本作は私たちの身近に実感しやすいいじめを話題にしている。しかし、いじめに限らず私たち一人ひとりがやってきてしまったことや、あるいは広く人類がこれまで犯してきた罪に関わるお話をしている。

私たちは、カクこと、ヨムことを愛するからこそ、言葉というものの危うさを踏まえていきたい。何気ないところでもこの言葉の性質は作用しているのだから。