acceptance

花野井あす

child


 白い世界から零れ落ちたその子は彷徨い旅に出た

 未知のみちを辿り、遠く遠く何処かまで旅に出た

 

 それは永く長く続く旅路

 険しく厳しい名も無い道程みちのり

 

 その子はたくさんで様々な色を見て聞き、そして留めた

 その子は音を奏で、言葉を鳴らし、詩を歌うことを知り、そして留めた

 

 ふとその子が足を止めると、彼は黒く醜い姿になっていた

 大きく彼方まで伸びた、歪な形になっていた


 彼は泣いて、哭いた

 世界へ還れなくなったことを嘆き悲しんだ


 すると、父なる世界が教え、母なる世界が授けた


 御前はすべての色を宿す宝石

 何者にでもなれる万色ばんしょくを映す鏡


 どうかその彩りで世界を照らしておくれ


 その子は頷き、その子は子でなくなった


 その子はひとすじの虹になった

 白い世界を鮮やかに描き出す、艶やかな虹になった


 白い世界は、空と海になった

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acceptance 花野井あす @asu_hana

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