僕とマーメイド
@SIBAFU2525
[プロローグ]あの夏の日
世の中には様々な噂が存在する。
どこかの国の湖に巨大な生物が生息しているだとか、夜道で口が裂けた女に襲われるだとか。
誰が言い出したのか、やがて人々はそんな噂を広げ、テレビや雑誌などでも取り上げられるようになった。
僕の通う高校でも、同級生達はそんな話で毎日盛り上がっている。
でも、僕は信じてなどいない。そんなの作り話だ。
昔からそういう話には興味を持てなかった。
だから同級生からは「つまんない奴だな」なんて言われたりしたこともあった。
そんな毎日がしばらく続いて、僕達は3年目の夏を迎えた。
その頃にはまた新しい噂が流れていた。
とある崖下の浜辺には上半身が人間の体、下半身は魚のような鱗とヒレがついた"人魚"がでるというものだった。
当然そんな話は信じてはいないが、その場所は僕がよく行く浜辺だった。
とても綺麗な場所で海風が気持ちよく、休日はよく行く場所なのだ。
そこで人魚なんて一度も見たことはない。
だから今回も誰かが勝手に作った噂話だと思っていた。
・・・だが、実際は違った。いつもようにその浜辺に来たときのことだった。
そこには1人の女性が海の向こうを眺めていた。僕は目を疑った。
髪は金髪でとても長い。上半身は服を着ておらず、胸には虹色に輝く貝殻がついてた。
何より目を引くのは、足だった。
いや、足ではない。下半身は魚のヒレのような形をしており表面には綺麗な鱗がついてた。
僕は、あの噂話であった"人魚"に遭遇した。
あまりに衝撃的な光景に開いた口が塞がらず、足が動かなかった。
そしてその人魚がこちらに気付いたのか、振り返ってきた。
とても美しい女性だった。
彼女は僕を見るたび驚いた様子だったが、何故か僕に向かって微笑んで見せた。
そしてすぐに視線を海辺に戻して、彼女は突然歌を歌い始めた。
その美しい歌声が耳に流れてくる。
どういうわけか、先ほどまでの緊張が解けていき同時に心地よい気分になっていった。
今まで信じてこなかった噂話が僕の目の前にいる。
この世のものではない存在。
ただ今は、恐怖を感じることより、彼女の歌に聴き入っていた。
透き通っていて、とても綺麗な歌声だった。
あのときのことはよく覚えている。
卒業してからも忘れることはできない。
これは僕が体験したお話。
あの夏に出会った人魚とのお話。
僕とマーメイド @SIBAFU2525
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。僕とマーメイドの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます