エピローグ ふたりのために


「フランもおいでよ!」


 ようやくできたベッドに犬の姿で飛び乗り、ノエルがフランを呼んだ。


「壊れちゃうよ」


 あまりの勢いに戸惑うフランに、大丈夫だと頷く。

 私とノエルを見比べ、そろりとベッドに腰掛けて。感触を確かめるように手で触れたあと、ようやく安心したのか猫の姿になる。

 暫くその場で沈み込む足の様子を気にしていたが、やがてくるりと丸くなった。


「今日からここで寝るんだよ」


 元の姿で寝るふたりなら一台のベッドで広さは十分。

 これからノエルが大きくなったとしても狭くはないだろうし、私が死んだあとに一台空くのもわかっている。


「はぁい!」


 嬉しそうなノエルの声。

 フランは少しうとうととし始めている。


「気に入ってくれてよかった」


 これで家の中にふたりが休む場所ができた。

 もちろんまだまだ必要なものはあるが、こうしてひとつずつ増やしていけばいい。

 ここがふたりにとって安住の地となるように。私にできることをしていこう。




 夜、ふたりが寝付くのを待ってから外へと出た。

 星空を見上げながら、先に逝った妻子を想う。

 本当はすぐにでも追いたかった。だが今となっては、たとえどんなに無様でも生きながらえてよかったと思う。

 私に再び生きていく意味を取り戻してくれたふたりのために。

 残り短い命、精一杯ここで生きていこうと誓った。

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あなたが遺してくれたもの 古都池 鴨 @kamo-to-moka

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