第4話


「そんなことがあったのですね…」

話を聞いたカイルはいきなり膝をつき、頭を下げ始めた。


「申し訳ありませんでした!弟が攻め、戦争を仕掛けようとし、挙句の果てに仇となる敵のアイテムまで見せてしまった…!私一人の命でどうとなるとは思ってはいませんが…」

「まぁ待ちなされ。ワシも頭に血が登ったとは言え後ろの弟君を殺しかけた。ここはお互い様とはいかないかのう…?」


先程とは違う、優しさを持つ目にカイルはまた土下座を始めた。

「す、すみません!涙が出てきてしまい…!」

国王からの愛を受け取ってこなかったカイルはその眼差しを今の状況に関わらず嬉しく思ってしまった。


「カイル王子、状況は城で聞かせてもらう。申し訳ないが後ろの兵たちと同様に手に錠をかけさせてもらう」

そう言ってカイルの腕に手錠をつけ気絶しているゲルドと兵達を城へと連行した。



ーー城内にて


「まず、私が報告を受けたのは会談が終わった一時間ほど後でした」

カイルは一から十までここまでの経緯をきちんと説明した。


「ふむ…やはり国王が怪しいか」

「そうだな。バンジェンスの国王とも頻繁に接触しているようだ」

「宣戦布告と受け取って攻めても良いんじゃねぇか?」

「ですが、向こうにいる民が可哀想です…」

色んな案が出る中レティスが出した案はこうだった。


「カイルには一度国に戻ってこう宣言してもらう」

その内容は

1.すぐに投降すれば宣戦布告の件もチャラにして、国を属国として収める。

2.投降せず、戦争を進めるとしてもそちらの民にてこちらに来たいという者がいた場合捕虜などの扱いなく受け入れる。

3.戦争を始めるなら国が潰れる覚悟をしてほしい。


「ねぇレティス様〜。これってまぁまぁ破格の提案なんじゃないのー?」

「眠ってるかと思ったら話は聞いてたか。まあそうだな」

「投降すれば属国になるとは言え被害なく今まで通りになりますからね」

「だけど第一王子のこいつに何も知らせず攻めてくる奴らだぜ?属国になるなんて言うわけがないだろ」

「まぁ向こうの反応はそうなるだろうが、上が馬鹿でも民まで馬鹿とは限らないからな」

「私はどうなったとしても、民だけは助けるべきだと思っています。それさえ保証してくださるならいくらでもこの命を差し出しましょう」


そうして会議は進んでいき、翌日にカイルはカルディアへと帰還していった。


ーーカルディア城内にて


「カイル、お前は今なんと言った?」

「我が国が全兵を投入したとしてもアルベリオンには勝てません。条件の通りに投降したほうが良いかと」

「お前は我が国を舐めているのか?あんな人間以下の者しかいない国に負けるわけがないだろう!」

(あぁ、やはりゲルドの人間至上の考え方はこの人から覚えたのか)

「父上がアルベリオンと戦うというのであれば、私は継承権を放棄し国から出させてもらいます」

これは遠回しに、『この国で最強である自分が抜ければ勝算などなくなる』という訴えだった。

だがその意図に気づかない国王は戦争を続行するとアルベリオンに再度宣戦布告を行った。


(まぁ、予想通りではあったな。ザイン様の言う通り話を聞くような方ではなかった。負ければほぼ死罪、私が継承権を放棄した今国王になるのはあのゲルド、民のことも考えず発言したということはそこまでの王だったという事だな…)

ゲルドは民からの人望は低く、悪評なども多いことから国王になるのはカイルのみだと思われていた。

だが、戦争続行と共にカイルの継承権放棄という情報が国中に出回り、アルベリオンが掲げていた民を受け入れるという条件を聞いた民の半数はカイルと共についていくと決めていた。


残りの半数は国王やゲルドのような人間至上主義を掲げ、カイルを好んでいなかった人間のみだ。


この時には既にカイルはアルベリオンに生きることを許されれば仕えたいと思っていた。

カルディアの最強とは言えアルベリオンの騎士団の十席に入れるとは思っていない。

それでもあのゲンドウやレティスに惹かれたのだ。

憧れたものを手放すほどヤワな人生の歩み方はしていない。


「レティス王、カルディアからの報告をしに参りました」

ここからの一歩が私の新しい人生の分岐点だろう。死罪にされたとしても、生きることを許されたとしても。国を捨てたことも、家族を捨てたことも悩みはした。だけど後悔はない。


「入れ」

この一歩が人生を変えるのだ。

「失礼します!!!」









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多種族の国の王様やってるだけなのに各国から魔王認定されてる件。まぁ全部返り討ちにしますけど 熊の手 @kuma_2028

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