向日葵

Asahi-Yuhi

向日葵

 話しかけられるだけで嬉しくて。


 友達以上になってみたくて。


 あの子だけを目で追ってしまう。


 私の名前より先にあの子の名前を探してしまう。


 この気持ちは恋なんですか?



 私が小学校高学年の頃に好きだった女の子。


 彼女は向日葵だった。


 「同性愛を認めて!」そんなニュースとか。


 たくさん見たけど、自分事じゃないと勝手に思ってた。


 私は、どこか遠くに思っていた。


 今思えば、彼女も同性愛なんて変に思っていない子だったのだと思う。


 勝手に同性だから好きになってもらえない、同性だから変な目で見られる、勝手な妄想で勝手に恋を諦めた。



 私があの子を意識し始めたのは、今思えば小五の時だろう。


 小一の頃から同じ小学校で、話したことはあった。


 小五の時、あまり話したことないな。


 そう思って話しかけてみたんだ。


 クラスで目立つ存在の彼女は、明るくて、笑顔がかわいくて、もっと話したい。


 この頃は恋心なんてものは存在していなかった。


 窓から見つけた向日葵は元気に育っていた。


 夏に、塾に入ることになって、体験で行った塾で彼女が話しかけてくれた。


 彼女がいるならと、その塾に決めたんだ。


 その時はただの衝動だった。


 友達いるし、授業が楽しかったし、親も安いって進めてるし、ここにしよう! みたいなノリだったのだと思う。


 成績上位者の名前に彼女の名前があった。


 勝ちたい、突然思ったんだ。


 ライバルは誰ですか?


 そんな質問に彼女の名前を書いた。


 彼女に釣り合いたい。


 今思えば、そんな意思だったのだと思う。


 彼女と仲良くなりたいと何度も話しかけて、たくさん遊んだ。


 ハロウィンは彼女のグループに誘われて一緒にハロウィンを過ごした。


 その時の会話は特別で、その時間が幸せだった。


 普段じゃ長い時間なのに、その時は短く感じて。


 彼女ともっと一緒にいたいという願いを心に閉じ込めていた。


 塾ではクラスがどんどん分かれていって。


 一つのクラスだったら簡単に一緒に入れたけど、どんどんクラスはニクラス、三クラスと分かれていった。


 そして、彼女と同じクラスに入れるように、小テストから大きなテストまで全力でがんばったんだ。


 でも、この気持ちの答えは出なかった。


 それどころか、謎に彼女を避けてしまう。


 一緒の空間に入れたあの時がもう幻かのように彼女の近くに行けない。


 話しかけたいのに離れてしまう。


 そんな日々が続き、クラス替えの時期がやってきた。


 二組。


 離れちゃったか。


 私は一組。


 この寂しさの答え気持ちは見つからなかった。


 それどころか、クラスが違うし、委員会も違う。


 全然話せない日々が続き、何にも変わらないまま夏休みがやってきた。


 同じだ!


 夏期講習のクラス分け。


 喜びと同時に気づきかけた気持ちを無意識に隠した。


 気づいた時のことはずっと覚えている。


 脳内にこびりついて離れない記憶になっているんだ。


 夏期講習終わり頃に休んでいた分の補習で塾に行っていた。


 やっと補習が終わり、自習して授業まで時間を潰そうとやる気がないままワークを取り出した。


 無音の教室に明るい声が聞こえたんだ。


 一番待ってた声だった。


 友達と一緒に笑いながら教室に入ってきて、先生に静かにしなさいと怒られてる。


 元気なのが羨ましい。


 彼女の笑顔だけで心がドクドクと動いている。


 そんな不思議な感覚を過ごしていた。


 この気持ちを、認めまいと思いながら。


 その時だった。


 彼女が隣の席に座った。


 他の席も空いてて、彼女ともっと仲良い子だって近くにいるのに。


 そして、やっほ〜、なんて声をかけてきて。


 笑いながら話し始めたんだ、君は。


 正直、この時何を話したかは曖昧で覚えていない。


 でも、自覚したんだ。


 胸が苦し過ぎて痛いほど、彼女のことが好きなんだって。


 そして、この思いは誰にも話さない、伝えない、隠し通す。


 そう決めた。


 それからは彼女を避けまくり、塾で同じクラスになっても話しかけに行くことはなくなり、彼女との接点は塾の授業くらいしかなくなった。


 学校では一言も話せなかった。


 あっという間に月日は経ち、卒業式になった。


 彼女に話したかった。


 話しかけるぞと覚悟を決めていた。


 なのに、話しかけれなかった。


 きっと、とっくに恋心は壊れ、存在しないものになっていたんだ。


 彼女が、同性愛者じゃないことなんか、分かっていたから。


 学年で一番モテてることも後から知った。


 きっと、中学生で彼氏出来るんだろうな。


 卒業式で流しかけた涙は、失恋の涙だったんだ思う。


 それから、私は引っ越し、彼女とかなり離れた場所で入学式が行なわれた。


 小学校が同じ友達から写真が送られてきた。


 あっ、彼女と同じクラスなんだ。


 友達と彼女と何人か。


 保存してしまった。


 きっと、この写真を消す時が彼女への未練を無くした時なんだと思う。



 今は、異性に好きな人がいけど、彼女の写真は消せていない。


 同性を好きになった。


 同性への恋。


 初恋は異性だったけど。


 同性への初恋は彼女が奪ったんだ。


 その事実は私の心の中にしっかり残っている。


 また、同性を好きになるのかな。


 そんなことを思いながら、向日葵を眺めた。



 あの時、彼女は向日葵だ。


 そんなことを無意識に思ったんだ。


 花言葉は「あなただけを見つめる」


 後付けっぽいけど、そんな恋だったな。


 今でもあの気持ちは忘れられない大切な気持ちだ。



 次に同性を好きになることがあったら、今度は気持ちを伝えてみたい。


 今の異性への恋心も伝えたい。


 たとえ、恋が実らなくても、恋心を大切にしたい。


 そんな思いをさせてくれた恋だった。

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向日葵 Asahi-Yuhi @asahi_yuhi

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