超常現象を解き明かせ!

何言ってんだ?この人は。

高校生にもなって厨二病を卒業出来ていないのだろうか。

超常現象を撮影しに行くなんてのも最近のテレビ番組では言わなくなってきているのに、あろう事か、この少女は超常現象を“解き明かす”なんて言った。

なんて人なんだろうか。


「あ、あれ?無視?」


考えていたが故に黙ってしまっていたのだが、少女は何も言わない俺を見て無視されてるのだと考えた様だ。


「超常現象を解き明かす、ってどういう事なんですか?」


「そうだね、まあ見て貰った方が早いか」


着いてきて、そう言って彼女はクールに歩き出した。向かう先は閉まっていて開かない前の扉。

少女は取っ手を引く。

ガシャン!

開かない。


「あー?そういえば横開きに変わったんだったっけ?」


今度は横向きに扉を引いた。

ガシャン!

開かない。


あれだけクールな雰囲気を出していたのに台無しだ。

少女は暫くの間、扉と格闘して開かないことを悟る。そして僕が入ってきた後ろ側の扉を通って教室を出て行った。


そんな彼女を見失わない様に僕も後を追いかける。


これは後から知った話なのだが、開かない前の扉は学園の七不思議の一つらしい。

鍵がかかっている訳ではない。

しかし、開かない。

建て付けが悪く開かない訳でもないらしい。

また、仕方ないからと扉を壊した事もあったらしいのだが、誰も何もしていないのに次の日には扉が直っていたりと不思議な事が起きていた。

そんな事ばかり起きているのだ。

何か見えない力が働いていると考えてしまってもおかしくはないだろう。


と、まあ、そんな事を考えている内に目的の場所らしき所についた。


「そういえば名乗るを忘れたね、私は新岬」


「僕は──」


「あー!大丈夫!君の名前は知っている。改めて名乗る必要はないよ」


先ほど名前を呼ばれたから僕の名前を知っている事は知っていたけど、名乗られたら名乗り返すのが礼儀かと思ったのだが、どうやら不要だった様だ。


「つい2分前に私は超常現象を解き明かそうと君に言ったよね?あれは言葉通りに受け取って貰って構わない。あまり知られていないが、この青ヶ咲学園では霊現象が多々起きている。今回君を誘った私の部活はそんな霊現象を解明、解決する為の部活なんだよ」


言っている事は分かる。

言いたい事も分かる。

けど、信じられるかどうかは別だ。

もし仮に彼女の言う事が本当だったとして解明解決とはどうやってしているのか。

何故彼女は僕を部活に勧誘しているのか。

状況を整理しきれない……。


「おや?信じられないといった様子だね」


彼女、新先輩は僕の顔を覗き込んで言った。

そして何かホッとした様に笑った。


「いやぁ、やっぱり体験するのが1番だよね」


新先輩のその言葉が発せられたのと同時に辺りの雰囲気が変わった。

今は4月で陽の光が暖かくはあるものの、肌寒さを感じる様な天候だった。

が、今は決定的に違う。

真夏の熱帯夜の様な肌に絡みつくどんよりとした空気。暑ささえ感じさせる湿度の高い空気だ。

しかし、熱いはずなのに何処か寒さを感じる。

猛暑の中、コンビニから漏れ出ている冷気の様な寒さ。

足元が異常に冷え、生温い風が体を通り抜けていく。


「あの、先輩!なんか変じゃないですか?」


「やっぱり君はか」


先輩は僕に一切視線を向けずに意味深なことを呟いている。

先程まではウザったいくらいに目を合わせてきた先輩だったが、今は廊下の先を見て逸らさない。

まるでそこを見ていなければ死んでしまうのではないかという位に凝視している。

その姿を不思議に思い、俺は先輩の視線の先、長い廊下の先にある突き当たりを見る。


すると、今になって気づく。

先輩と俺の視線を一身に受けるおかっぱの少女。

遠くから見ていれば普通の女の子だ。

しかし、目の良い僕にはその少女の姿が事細かに見えた。

目があるべき場所は黒い空洞になっている。

ニヤリと笑うその口には歯が殆どなく、下の歯数本と犬歯だけが見えた。

少女は僕に見られていること気づき、イヒイヒと不気味な笑い声を上げた。

そしてその後に言った。


「遊ボ」

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私立青ヶ咲学園〜霊験灼か解明部の躍動〜 双柳369 @369bell

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