第2話「コンセプトからプロットについて」

 では、次にコンセプトについてお話ししていきます。まず、当初考えていたコンセプト案について、僕が実際に書いたメモをお見せします(原文ママなので、言葉遣いとか砕けていますが、ご了承ください)。Donn!




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 仮題:主観位置の変更による未来事象の変化について




 コンセプト:主人公が変わることによって物語の展開が変わるのか、を問う実験的小説




 コンセプト詳細

 多くの物語において主人公の存在なくして語れない。そも、主人公のいない物語はほとんどないといっても良い。

 物語は基本、主人公を中心に進んでいく。そのため、主人公は普段、我々の多くが経験しているよりも波瀾万丈な人生を歩んでいる。主人公補正とは違う、「主人公的偏向」と呼ぶべきか。


 では、この「主人公的偏向」を別々の人物に割り当てたらどうだろう。もちろん、同時に複数の人物に「主人公的偏向」を与えてしまうと、物語が破綻してしまう。主人公的偏向が強く発現しないためだ。ここでは同じ舞台設定を用意して主人公を別々にすることで果たして結末は変わるのか、と言う問いに答えを出していきたい。


 ぶっちゃけた話、どうなるのか、作者自身も分からない。視点の違いによる思想の違いは楽しめるだろうが、結末が同じではつまらない。

 そのため、できるだけ違う展開になるよう努める。


 舞台設定はクローズドサークル。キャラクターは何かしらの能力を持っている。題材はミステリーを扱う。




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 もうこの時点で大体の骨格は固まっていますね。


 で、次にまとめたのが内容詳細になります。内容詳細についてはこちらも自分のメモがあるので、ご覧ください(原文ママなので、ご了承ください)。DON!




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 内容詳細


 登場人物は11人とする。

 11人の役職は以下の通り(※は犯人陣営)。

 ・軍人

 ・占い師+双子

 ・人外※

 ・蘇る人外※

 ・神の御使※

 ・市民

 ・シェフ

 ・適正者(※)+双子

 ・魔術師

 ・狂信者※

 ・(未来予測者)→初日死亡


 お察しの通り、ここには3つの陣営が潜んでいる。


 人間陣営:文字通り、人間で構成される陣営。人類の存亡をかけて戦う。軍人、魔術師は人外を殺すことはできる(ただし、一人につき一体を相手にするのが限界、シェフは二分の一の確率で殺すことができる)が、それ以外は全くをもって無力。


 人外陣営:人類を抹殺する陣営。人類を殺し切ると勝ち。神陣営は殺せない。


 神陣営:人間にも人外にも属さない第3の陣営。人間陣営がいなくなった時点で生存していた場合、執行者としての能力が付与され、瞬く間に生存者を抹殺する。人外はコレを抹殺することはできない。人間は触れるだけで消すことができる。


 場所について。

 大海原に佇む孤島。島の地下には3つの陣営の歴史が描かれた石碑がある。地球とは異なる別の惑星。

 と、いう設定で、実は仮想空間による実験。




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 いかがでしょうか。役職名とか見慣れた名前があるかと思います。蘇る人外とか狂信者とか、これらは人狼ジャッジメントって言うゲームから拝借しています。そして、この時点で人間と人外、そして神の三陣営についても書かれていますし、場所についても決まっていますね。はい、別の惑星で行うということになっています。


 これ、どうして地球ではない別の惑星にしたかって言うと、彼らが閉じ込められた島に隠された謎っていうのをメタ的なもの——まぁ「この世界の成り立ち」的なものにしたいな、と思っていて。そうなったときに実在してそうな固有名詞(ヴィクトル・コンドリア大学とか東京都立呪術高等専門学校とか)だとちょっと説明しづらいというか、多分読者の人たちは謎が明かされた時にすっと理解できないだろうなと思ったので、地球とは異なる別の惑星で展開をする。そうすることでそもそも、この物語の世界っていうのは、自分たちが生きている世界とは違うんだな、という区切りを潜在的につけさせることにしました。


 コンセプトについてはこんな感じになりますね。



 

  ***



 

 次に本プロットについて見ていこうと思うんですけれども、プロットについてはまず、当初考えていた大枠(全体的な章構成、大まかな目標を表したもの)を見ていただきます。




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 資料1「軍人」→ビクトリアに騙されてBAD


 資料2「社長」→イに殲滅されてBAD


 資料3「手品師」→アレクサンドルに騙されてBAD


 資料4「料理人」→ギリギリ生き残るも、人外化したハルカによってBAD


 資料5「妹」→ギリギリ生き残るも、息たえてDRAW


 資料6「兄」→人外化したものの、理性を保ち他を殲滅してギリHAPPY


 資料7「令嬢」→イが残るものの、アレクサンドルに殺させてギリHAPPY


 資料8「学生」→間違ってデヴィッドに触ってしまいBAD


 資料9「医者」→全員を殺してHAPPY


 資料10「素人」→深層まで行ってHAPPY


「言語生成モデルを用いた主人公的偏向に基づく一人称物語の創発と比較・検討」→ネタバラシ



 各章、十纏に基づいたテーマを宿す。

 ・無慚:自分の犯した罪を、自分に対して恥じない心:狂人(アレクサンドル)

 ・無愧:自分の犯した罪を、他人に対して恥じない心:人外(ペーター)

 ・嫉:ねたむ心:蘇る人外(ビクトリア)

 ・慳:ものおしみする心:魔術師(クラウディア)

 ・掉挙:浮ついて静まりのない心:市民(デヴィッド)

 ・悔:過去の悪い行いを悔い、執着し続けること:占い師(マユカ)

 ・惛沈:心が沈み、ふさぎこむこと:神の御使(イ・ソヒ)

 ・眠:心をあいまいにして視野を狭くする心:シェフ(シャオユウ)

 ・忿:思い通りならないことに怒りの情をもつこと:軍人(ロバート)

 ・覆:自己のあやまちをおおいかくすこと:適性者(ハルカ)


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 どうでしょう。最後の方で主要キャラクターの一覧が出てくると思いますが、知ってる名前と知らない名前、知らない名前というよりかはどこか「あれっ」て思うような名前があると思います。アレクサンドルだとかデビットとか。


 この小説では登場人物の名前にもギミックがあるじゃないですか。そのギミックについて最初から考えて名前をつけると、きっと考えたところで満足してしまうだろうな、と思ったので、最初は仮の名前をつけていました。そして、初稿が上がった段階で、じゃあ実際に名前どうしようかと考え、イ・ソヒとかシャオユウとか採用された名前はありますが、それ以外は頭文字が「THIS IS A LIE」になるように変更しました。


 そして、各章で何かテーマが欲しいなと考えて、調べていたら仏教には十纏って言う、人間の負の感情を表す言葉がありまして、その十纏に紐付けて書いていこうと決めました。まぁ書いていく中で結果的には違う結末になったり、主題から外れたものもありましたが、プロットを練る際にはこれらを参考にしながら進めました。


 プロットの作り方はエクセルシートを用意し、各登場人物が当該の時間帯にどんな行動をとっていたのかを事細かに考え、本文を執筆する際に必要なシーンを切り取って構成していきました。


 で、実は資料11と言うべきなのかなぁ、資料10の後に「言語生成モデルを用いた主人公的偏向に基づく一人称物語の創発と比較・検討」ってあるんですけれども、本来であれば裏世界線の部分をネタバラシ形式の架空の論文にしようと考えていました。ただ、考えていた時には「ちょっと違うなぁ」という気がしていて、でも当時は代替の案はなかったので、これでプロットづくりを進めていきました。


 これがどうして裏世界線が出てきたのかについては、また後ほど裏世界線のところでお話ししてさせていただけたらなと思います。プロットに関してはえとこんな形になります。




 では、次からいよいよ本文を交えた解説を行なっていきます。

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全文解説「トマス・プランテーション——主人公が変わると物語の結末は変わるのか?」 名無之権兵衛 @nanashino0313

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