センシティブな内容なので面白いと言っていいのか分からないが、読み応えがあり文章が魂の叫びをあげているようだ。
随所に出てくる作者の劣等感は自分自身に当てはまることもあるし、そういった人間が身近にいたこともあるのでイメージしやすい。
エッセイを通して作者は自分を卑下しているが、センスが光る文章力で読ませる巧さがある。
なによりヤングマガジンに投稿した漫画が入賞したと綴られていた。
ヤンマガで入賞……、それだけで非凡ではないか。
これは大手出版社の小説賞に入賞したようなものだ。
投稿小説サイトで蜘蛛の糸を掴もうと蠢く作者たちが、何度打ちのめされても立ち上がり書き続けている作者たちが切望する偉業を作者は成し遂げたのである。
全体的に社会に対する生き難さを綴った独白だが、その一点に関しては羨ましくて仕方がない。
作者は自分がいかにダメな人間であるかを、恥をさらけ出すように書き連ねていきます。
でもこの作者は社会への適応力と引き換えに、圧倒的な言語センスと表現力を手に入れた人でした。
以下、その一部を紹介させていただきます。
・私を身ごもっていた頃の母親に会うことができたならば、私は彼女にこう言うだろう。
「その子を中絶してくれ。その子からのお願いだ」
・人としての情が全くないサイコパスのような人間になりたい。
満開の桜の美しさには浸れないが、散って行く寂しさは感じなくて済むのだから。
・やりたくて「いい人」やってるわけじゃない。
「悪い人」になれないだけだ。
・自分を幸福だと思い込ませるってことは自分に麻酔をかけるってことだ。
だがその麻酔が効かないほどの痛みを感じているのだ。
・嫌な記憶は嫌な記憶でしか消せない。
残念ながらこれ以外の方法を私は知らないのだ。
読んでいて胸が痛くなるかもしれません。
だからこそ読む価値があります。
たとえ幸せな人生を送っている人であっても、共感できるエピソードはきっとあるでしょう。