専門学校

六散人

電車の中で見た中吊り広告の話

この稿を書くに当たって思い出したことがある。

ご存じの方も多いと思うのだが、品川から東京方面の電車に乗っていると、左手に見えるビルに「財界2世学院」という看板が上がっている。

毎回東京に出張に行くたびにその看板を見て、3世だと入学できないんだろうか?――などと、勝手な想像を膨らませていた。


ネットで調べようと、その時には思うのだが、これも毎回東京駅に着く頃にはすっかり忘れ去ってしまう。

何故なら私は極端な方向音痴で、東京駅に着いた途端に、毎回迷子になってしまうからだ。

そのため新幹線が東京駅に近づいて来ると、今日こそ迷子にならんぞ――というプレッシャーから、他のことは頭から飛んでしまうという次第なのだ。

今回偶然思い出したので、ネットで調べてみると、残念なことに既に学校としての実態はなく、ビルと看板だけが残されているとのことだった。


さて本題である。

今から30年ほど前の話。

その日私は仕事で電車に乗っていた。

電車は空いていたので、座席に座って何気なく中吊り広告を見ると、専門学校(※作者注1)の生徒募集の広告がぶら下がっていた。


その学校は4つの学科に分かれているようなので、上から順番に見ていく。

1番上は<アニマルケア学科>。

なるほど、トリマーとかそういう職種の人を要請する学校か。


2番目は<イヌネコ学科>。

ふむ。<アニマルケア学科>との違いは?まあ、犬と猫は多いからね。それに特化してるということかな。


そして3番目。<サバイバル学科>(事実です)。

何?サバイバル?一体何を教えるんだ?

その時私は、友人のそのまた友人の話を思い出した。

その人はある大学の研究所の大学院に入学したのだが、毎年院生を対象とする、学外での実習というのがあったそうだ(30年以上前の話です)。


その内容というのが、九州地方(だったと思います)の無人島に数名の学生だけで放り込まれて、2泊3日で島に生息する猿の群れの生態観察をするという過酷なものだったらしい(※作者注2)。

人呼んで<サバイバル実習>。

私は3番目の学科名から、即座にそれを連想した。


そして4番目が極めつけ。

何と!<アフリカンワイルドライフ学科>(事実です)。

アフリカンワイルドライフですと!!

アフリカでの野生生活(直訳)という意味ですか?


もしかして、野生のシマウマを調教して乗騎にするとか、ライオンとタイマンはる方法とかを教えるのか?そして卒業後の進路は?

そんな妄想を抱いてワクワクしているうちに、一駅乗り過ごしてしまった。

今になって思う。

学生は集まったのだろうか?


※作者注1

ネットで検索したところ、非常によく似た名称の学校がヒットしましたが、設立年度も所在地も沿革も全く異なっていたため、読者の誤解を避けるために、名称は伏せております。


※作者注2

友人からの又聞きで、事実だったかどうかは検証できていません。もし間違っていましたら、平にお詫び申し上げます。関係者の皆様、寛容な御心でご容赦下さい。

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専門学校 六散人 @ROKUSANJIN

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