脳内の声に従って

にゃべ♪

出られない部屋

 俺には3分以内にやらなければならない事があった。何かを探さなければいけないようだ。住宅の内見中に突然頭の中で声が響き渡り、それに従わなくてはいけないと感じたのだ。必死になって探していると、何もないハズの部屋の中にぽつんと箱があった。これが探さなければいけないものなのか?

 俺は目を疑い、メガネをかけたり外したりした。どうやらメガネをかけると見えるようだ。


 俺は好奇心に従って箱に手を伸ばす。触った途端、指に出来たささくれに微かな痛みを感じた。それは何かの前兆だったのかも知れない。

 触った瞬間に脳内に流れる「はなさないで」と言うメッセージ。その声にもまた抗えない強制力があった。


 箱の色は白――のはずだったのに、気が付くとこまめに変わっている。赤くなった青くなったり。どう言う事なんだろう? 意味が分からない。夢なのか? ここは夢の中なのか?

 箱をよく見ると何か文字も書いてある。メガネの位置を直してよく見ると『トリあえず』と書いてあった。やはり意味が分からない。俺にどうしろと?


 気が付くと、箱を触ってから急に静かになっていた。周りを見回すと誰もいない。これは一体どう言う事なのか。一緒に来たはずの不動産屋はどこに消えたのか。

 怖くなった俺は窓の外を見られなかった。外の景色を見てしまったら何かが壊れる気がした。この閉塞感に俺は恐怖を感じる。案の定、玄関のドアは開かない。

 この閉鎖空間の中で俺は試されている。一体何をすればいいと言うのだろう。


「ヒントもなしかよ、クソっ!」


 何も出来ずにイラついていると、突然室内に警告音が鳴り響いた。この箱から聞こえているのか? 俺は意を決して箱のフタを開ける。すると、強い光で視界を奪われて羽音だけが遠ざかっていった。驚いた俺は箱を床に落とす。すると、今度は部屋が揺れ始めた。

 窓の外を見ると、全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れが走り去っていく。悪夢からはまだ覚めそうにない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

脳内の声に従って にゃべ♪ @nyabech2016

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ