失礼だけど、愛おしい彼。

平 遊

結局、大好き。

「だからちぃちゃん、外でめがね外しちゃダメだってば!」


あたしが家の外で少しでもめがねを外すと、彼はすっ飛んできてめがねを掛けさせる。

曰く、


「めがねはちぃちゃんの顔の一部なんだから、めがね外したらちぃちゃんって認識してもらえないよ?」


だそうだ。

確かにあたしは小さな頃からかなりの近眼だから、レンズも分厚くて、オシャレめがねなんて夢のまた夢。分厚いレンズに耐えうるゴツいフレームのめがねばかり。

そりゃ、めがねの印象強すぎて、顔の一部にもなるよね。


でも、ちょっと失礼じゃない!?


おまけにあたし、名前に「ち」なんて付かないの。でも彼はあたしを「ちぃちゃん」て呼ぶ。それはあたしが小さいから。


ほんと、失礼じゃない!?


だけどね。

あたし、知ってるんだ。

彼があたしのこと


「ちっちゃいから可愛くてしょうがないんだ」


って言ってくれてること。


「めがねを外したちぃちゃんは、俺以外には誰にも見せたくないんだよ、可愛すぎて」


とかも言ってくれてること。


ほんともう、愛おしすぎ。


ほんとはね。

あたし、ド近眼のこの分厚いレンズのめがねが、すごくすごくイヤだった。コンプレックスだった。

だけど、彼が言ったの。


「俺はカッコいいと思うな、そのめがね。そんなめがねを顔の一部にできちゃうちぃちゃんは、ほんとすごいよ! そんなちぃちゃんが俺は好きだ!」


つて。


それにね。

背が低いことも、すごくすごくイヤだった。

だけど、彼が言ったの。


「ちっちゃいちぃちゃんだからこそ、俺は好きになったんだと思う。なんならもっと小さくして、ポケットに入れて連れ歩きたいくらいだよ。小さいままでいてくれてありがとう、ちぃちゃん。大好きだよ」


って。


もう、あたしのコンプレックス、大崩壊!

彼の失礼には、愛がある。

おっきなおっきな、愛がある。

そのおっきな愛で、彼はあたしのコンプレックスを、いとも簡単に粉々に打ち砕いてくれたんだ。


失礼だけど、愛おしい彼。

ありがと。大好きだよ。

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失礼だけど、愛おしい彼。 平 遊 @taira_yuu

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