最終話 エピローグ②
「ま、魔族だと!!」
貴族が立ち上がった瞬間に貴族の胸に孔が開いた。
「あ……」
胸に孔が開けられた貴族は白目を剥いてその場に崩れ落ちた。
「ああ、言い忘れていたが勝手に席を立ったら敵対行為を行ったとみなして駆除する」
リュヴィスの言葉にナルシア王国の重鎮達は顔を青くした。
「うんうん、話を聞く姿勢が整ったと言うことで話を始めても良いかな?」
「……」
リュヴィスの言葉に重鎮達は沈黙で返す。その態度にリュヴィスは目を細めると近くにいた所領の貴族の頭をむんずと掴むとそのまま壁に向かって投げつけた。
グシャァァァ!!
壁に高速で投げつけられた男の体は粉々に砕けた。リュヴィスの凄まじい身体能力を見せつけられたと言うところである。
「返事くらいしろよ。ボンクラ共。もう二、三人くらい駆除しないとわからんか?」
リュヴィスの言葉に重鎮達は震え上がった。そして壊れた玩具のように首を左右に振りリュヴィスの問いかけに返答する。
「さて、君達はどうして我々を殺そうとしたのかな? 別に我々と君達には何の交流もない。別に我々は宝物を隠し持っているわけではない。つまり我々を殺す理由が私達には理解出来ないのだよ。どういういきさつで我々を殺そうとしたのかな?」
リュヴィスはまっすぐにナルシア王国国王を見つめて言う。
「一〇〇年前のアインゼス竜皇国の蹂躙に……」
「いつお前に聞いたんだよ。余計な口を差し挟むなドアホウが!!」
国王の隣にいた初老の男が口を開いたがそれをリュヴィスは怒鳴りつけて口を封じた。
「で?お前は質問に答えれないのか?」
リュヴィスが国王を睨みつけて言う。リュヴィスの視線には"答えないのなら駆除する"という明確な殺意がある。
「ひゃ、一〇〇年前にアインゼス竜皇国がすべての人族の国を滅ぼした。その時に魔族達がその黒幕だと……今回の出兵はその報復なのだ」
「何言ってる?元々はアインゼス竜皇国の皇女である
「な……」
「何を驚いてるんだ?一国の皇女を誘拐したんだ戦争になるのは当然じゃないか?まぁ、そのおかげでアインゼス竜皇国はリフィ達と縁が出来て、俺もリフィと結婚できたわけだがな」
リュヴィスの言葉にナルシア王国の面々はゴクリと喉をならした。リュヴィスの言葉に端々にナルシア王国への殺意が大いに含まれているのだ。
「お、お待ちください!! 我々は皆様方を誤解しておりました!! 皆様方が…」
ドンドン!!
リュヴィスの指から光術が放たれ座っていた重鎮二人の胸を穿つ。胸を貫かれた二人は崩れ落ちた。
「ひぃ!!」
「あ、あ…」
周囲の重鎮達が恐怖のために立ち上がった者がいた。その瞬間、ギルノーとゴルザーがその者達の首を刎ねる。
「すまんすまん。話の腰を折っちまったな。確かお前らが我々を誤解してたとか何とか言ってたな。続けてくれ」
リュヴィスはそういうと手を使って促したが、国王は顔を青くして答えることができない。
「そうか。それならこっちから質問するぞ」
リュヴィスは国王を睨みつけながら言う。
「お前、俺の妻のリフィを美しいと思うか?」
「え?え?」
リュヴィスの質問に国王は理解出来ないというような反応をしてしまった。
ドガシャァァ!!
その瞬間、大理石を張った巨大な机をリュヴィスは片手で投げ飛ばすと壁に向かって飛びぶつかって落ちる。たった今、リュヴィスが投げ飛ばした机は一人の力では動かすことは決して出来ないのだ。
「お前、俺の言葉がわからないのか?」
「ひ、え?え?」
「俺が何言ってるかわかんねぇのかよ?」
「わ、わかります!!」
「じゃあ、俺の質問に
「は、はい!!」
「俺の妻のリフィは美しいと思うか?」
「は、はい!!」
「それで淫売に見えたか?」
「え?え?」
ビシュン!! ……ゴトリ
リュヴィスが光術を放ち、国王の右腕を吹き飛ばした。
「あ、あ……がぁぁぁぁっぁぁぁぁっぁ!!」
腕を吹き飛ばされた国王が絶叫を放つ。
「俺の妻は淫売に見えるかって聞いてるんだよ!!」
「み、見えません!!」
「じゃあ、どうして淫売のように俺の妻を扱った?」
「し、してません!!」
「いいや、した!!お前らはしたんだよ!!俺の妻だけじゃなく。
「ひぃぃ!!」
「誤解だ?誤解で家族を辱められて俺達が黙ってると思ってんのか?お前らのような奴等が出るならやってやろうじゃねぇか!!」
リュヴィスはそう言うと指先を国王へと向ける。
「良かったな。お望み通りナルシア王国の者共は皆殺しにしてやる。他の三国の連中も定期的に
リュヴィスの言葉に国王は青い顔をして慈悲を乞う。その表情にはこれ以上無い後悔の感情が溢れていた。自分達が手を出した相手はこの上ない絶対的強者であり、容赦のない者達であったのだ。
ビシュン!!
リュヴィスの指から光術が放たれ国王の胸に孔が開いた。それが合図となり残りの魔族達が重鎮達を容赦なく駆除した。
「もう、あんまり恥ずかしいこといわないでくれる」
リフィがリュヴィスに少し困ったように言うとリュヴィスはバツの悪い表情を浮かべた。
「すまん、どうしてもこいつらがお前にやろうとしたことが許せなくてな」
「あなたのそんなところってシルヴィスさんに本当にそっくりよね」
リフィは苦笑交じりに言うとリュヴィスは少しばかり口を尖らせた。
「いや、俺は親父よりも随分ましだと思うぞ。ですよね
「いや、シルヴィス君そっくりだぞ」
「えーーーーー!!」
マルトの言葉にリュヴィスは驚きの声をあげる。
「ヴェルシス君はどっちかと言えばヴェルティアさんだし、ルティアちゃんはシルヴィス君だな」
「いや、兄貴は確かにお袋だけど、ルティアはお袋じゃないですか?」
「そうかな?私としてはこれであってると思うんだよね」
「うーむ」
リュヴィスはマルトにそう言われると首を捻る。
「あらあら、私はルティアちゃんはシルヴィスさんだと思うわ」
「ですよね!!
「そうかのう? 儂はリュヴィスはヴェルティアさんに似てると思うんじゃがな」
「いや、さすがにお袋のように突っ走ったりしませんよ」
「そうかのう?」
魔族達はワイワイと井戸端会議を始めてしまう。それはいつもの光景であった。
この日、ナルシア王国は徹底的に破壊され国民全てが容赦なく報復の対象となり、完全に滅亡した。
魔族達の破壊は近隣三国にも及び、王侯貴族の全てが殺される事になった。しかし、国民は皆殺しになる事は無かったために人族は絶滅を免れることになる。
『生き残ったお前達に最後のチャンスをやる。これより永遠に我ら魔族と接触を持とうとするな。次に我らに敵対行動をとればお前達を絶滅させる』
この言葉を残し魔族達は姿を消した。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「おー帰ってきた」
「どこに行ってたんです?」
村に帰った魔族達を出迎えたのはシルヴィスとヴェルティア、ディアーネ、ユリである。すでに容姿は十代のそれではないが全員二十代前半に見える。
「親父、お袋!!ディアーネとユリも来てたのか?」
リュヴィスが驚いた表情を浮かべた。
「ああ、クフィの様子を見たくてな」
「いや、この前来たばかりじゃないか」
「そうだけどさ。やっぱり会いたいじゃないか」
シルヴィスはそういって笑う。
「あらら、それじゃあすぐ食事を用意するわね」
ミューレイ達がニッコリ笑って食事の準備に入る。
「それで全員そろってどこにお出かけしてたんだ?」
シルヴィスの質問にリュヴィスは答える。
「ナルシア王国とやらが突然襲ってきたんだよ」
「ほう?」
「それは聞き捨てならないですね」
リュヴィスの返答にシルヴィスとヴェルティアは目を細めて返答する。そこから放たれる威圧感、殺気は凄まじいものであった。
「親父、お袋…そんなに威圧感をばらまかないでくれクフィがビックリするだろ」
リュヴィスの言葉に二人はいかんいかんと言う風に威圧感を抑えた。
「もちろん落とし前をつけてきた。ナルシア王国の人間は皆殺しにしたし、周辺の三国にも相当の被害を与えたからしばらくは大丈夫だと思うよ」
「そうか。それならよかった」
「ええ、さすがに私としても息子や親友、孫が不幸になるのは見過ごせませんからね」
(うん、親父やお袋が参加しなくて良かったよ)
リュヴィスは心からそう思う。情報を伝えておけば間違いなくアインゼス竜皇国が再侵攻を行い人族は絶滅することになったことだろう。
「ま、せっかく来たんだしゆっくりしていってくれ」
「もちろんです!!リフィ!!ちょっと私も料理手伝います!!」
ヴェルティアが立ち上がり料理のために走って行く。
その様子はアインゼス竜皇国と魔族達との今後を象徴するかのような光景であった。
ヴェルティア誘拐から始まった騒動により天界は滅亡し、人族の国家も一度全て滅亡したというとんでもない事態になった。
しかし、一方でアインゼス竜皇国と魔族は固い絆で結ばれるという結果になったのである。
アインゼス竜皇国と魔族達の絆が崩れることは永遠にないだろう。
〈完〉
最強皇女を異世界に召喚したことでとんでもないことになった世界の話 やとぎ @yatogi
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