第2話 謎の深まり
千鶴の研究は、夜が更けるにつれて一層の熱を帯びていった。彼女の前に広がるデータとグラフは、未知の病原体の存在を強く示唆していた。一方、街の中心部では、颯が感染者の家族と話をしていた。その表情は、絶望と不安で曇っていた。
「彼はもう、私たちの話も聞かないんです。ただ座って、壁を見つめているだけで…」
家族の証言は、颯の心に重くのしかかった。これは単なる疫病以上の何か、人間の意志を根底から覆すような脅威が潜んでいる。
その夜、千鶴はついに重要な発見をする。病原体は非常に特異な挙動を示し、通常の細菌やウイルスとは異なる性質を持っていることが分かった。彼女はその発見を上司に報告するが、反応は鈍かった。
「千鶴、これは重要な発見かもしれないが、もっと確かな証拠が必要だ。」
千鶴は失望したが、諦めることなくさらなる研究を続ける決意を固める。
一方で、颯は感染者の行動パターンに一定の法則性を見出し始めていた。感染者たちは特定の場所や環境に引き寄せられるような行動を示していた。これは偶然の一致ではない、何かしらの意図があるように思えた。
颯はこの情報を基に、捜査の方向性を定める。彼は感染者たちが集まる場所を訪れ、そこで何か手がかりを見つけられないかと考えていた。
その頃、千鶴もまた病原体の研究から一つの仮説を立てていた。この病原体は自然界に存在しえない特性を持ち、もしかすると人為的に作られた可能性がある。
千鶴と颯はまだ互いの存在を知らない。しかし、二人の探求が交差する時、物語は新たな展開を迎えようとしていた。サボリンダーの謎は深まるばかりで、その背後に隠された真実への道は険しく、遠かった。
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