【KAC20248】800メートル徒競走、アンカーはMAGA猫!君なら出来る!

saito sekai

1話完結800字小説

此処は、ある高校の図書室。昼休みだというのに、皆真剣に勉強中だ。熱心に本を探している女子がいる。彼女の名前は“羽田空美”あだ名は「羽田空港」だ。


空美には恋人がいる。黙って付き合っている相手がいた。彼の名前は成田宙、空港同士なんて・・・なので、隠れて会っていた。しかし隠して付き合う理由は他にもあった・・・


本棚の上の方に、少しくたびれたその本が。「あった!MAGA猫本。誰も借りてなくて良かった」これは大人向けの童話だ。話題になっており、いつも誰かが借りている状態だったので、やっと手に出来たのだ。


深夜二人は例の童話について携帯で話す。宙は既に読んでいた。


「全然共感出来ない、この本。何がMEGA猫よ!どうしてチーターに勝てるのよ。チーターが前日腹下し?なんで、こんなの流行んだか・・・」

「そうだよな、でも最初気弱な猫が、様々な試練を乗り越えてMEGAになる過程が良いんだ。頑張ったMEGA猫に、追い風が吹く、やっぱり気持ち良いラストじゃないか」

たわいもない会話を繋げて、二人はある事実に目を背けている。それは・・・


空美の父親は長年愛人を持っていて、子供まで。それがなんと、成田宙。つまり二人は異母兄妹である。しかし既に愛し合っていた後にその事実を知ったのだった。


「本当は、もっと・・・こんな子供のような本を楽しめるピュアな気持ちでいたかったよ」「そうだよな、読んでいるときは、少しは現実を忘れていたけれど・・」「これからどうする・・・死ぬ?」


二人は現実を背けることなく、ある結論を出した。それは、自分達の両親に全てを話す。そして反対されたら、その時は永遠に結ばれる道を選ぶことだった。


そして世界は二人の味方をしなかったのだった。


クラスでは、二週間無断欠席をしている二人の話題で持ち切りだ。警察は捜査を開始したようだ。「MEGA猫」本の裏表紙には二人の遺書が綴られていることに、まだ誰も気づいていない。

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