眼鏡騎士団、爆誕 〜氷麗の騎士スピンオフ〜
矢口愛留
片眼鏡騎士団、爆誕
関連作品「氷麗の騎士は私にだけ甘く微笑む」
――*――
魔力探知眼鏡。
それは、とある聖女と魔法師団魔道具研究室の協力によって完成した、アイウェア型魔道具である。
この魔道具を開発した目的は、『呪い』の魔力波を検知して、王都の街中に出回っていると思われる『呪物』を回収することだ。
そして今。
魔力探知眼鏡の完成が間近となり、王都を警備する魔法騎士団に、その魔道具は配備されようとしていた。
それすなわち、眼鏡騎士団の爆誕である――。
「いや、ちょっと待て、ビスケ」
脳内で壮大なモノローグを展開し、感傷に浸っていたビスケに冷静にツッコミを入れたのは、魔法騎士団長だった。
「え? なんですか、団長?」
魔道具研究室の副室長であるビスケと彼は、それなりに長い付き合いで気心も知れている。
団長は、『魔力探知眼鏡・改』を着用し、机に置いてある呪物を眺めていたが、ややあって眼鏡を外すと、ビスケに返却した。
「呪いの靄が両方の目で見える必要はないだろう。視界が塞がれては、
「ええ?
「何か問題があるのか?」
「はい。付けられる機能が半減します」
ビスケはきっぱりとそう言って、団長から返された『魔力探知眼鏡・改』を手に取り、愛おしそうに撫でた。
魔道具研究に人生を捧げてきたビスケにとって、自分たちが携わった魔道具はみな、子供のようなものである。
「特定の魔力を探知できる以外に、何か別の機能が付いているのか?」
「はい! よくぞ聞いてくれました!」
団長に問われたビスケは、眼鏡を自ら装着して、嬉々として話し始めた。
「いいですか、右のフレーム上部にあるボタンを押すと、魔力の色が見えるのですが、これを長押しすると魔力の数値化ができます。すなわち相手の戦闘力を測ることができまして、例えば団長の戦闘力は――」
「いらん。相手の実力なら対峙すればわかる」
団長から立ち上る魔力波には53万という数値が示されていたが、それを告げることなく、切り捨てられてしまった。
ビスケはめげずに、もう一方の機能を説明する。
「ま、まだあります。左のフレーム上部のボタンを押すと犯人追跡機能を起動し、周囲の地図が表示されます。長押しするとアンテナが伸びて、発信機と呼ばれる追跡用魔道具を持たせた犯人の位置を地図上に光点として表示、盗聴機能も――」
「それもいらん。そもそも、対象に追跡用の魔道具を持たせるよりも、『影』を一人付ける方がよっぽど楽だ。追跡用魔道具を簡単に荷物に入れられるような迂闊な相手なら、撒かれることは絶対にない」
「ぐっ」
これがあれば、子供でも本格的な探偵団ごっこができる優れものなのに。変声用魔道具とセットで売り出したら最高だ。
「どちらの機能もいらないですか……? 魔力波が見えるだけでいいんですか? 本当に?」
「ああ、それだけで充分だ」
「はあ、そうですか」
魔法騎士団長は、魔道具のロマンというものをわかっていない。
彼の息子、ウィリアムとは大違いだ。ウィリアムは正真正銘研究者気質だというのに。
「いいか、騎士団にとっては実用性と効率が全てだ。いらんロマンなど求めないでくれ」
団長は、ため息をつきながら呆れ顔でそう告げる。
ビスケは、心の内を読まれたようなその言葉に、呻くほかなかった。
「……わかりました。諦めて
「……
そうして、不満そうにしながらも
眼鏡騎士団、爆誕 〜氷麗の騎士スピンオフ〜 矢口愛留 @ido_yaguchi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます