メガネキャラは不人気の夢を見るか
辺理可付加
ちなみに鈴はスポーツ選手みたいなサングラス持ってる。
「ねぇねぇ、どれがいいと思う〜?」
日曜日の昼。ここは新宿のメガネショップ。
「どれでもいいんじゃない?」
「どれでもよくはないよ!」
はじめは用がないらしく、スマホをいじって素っ気ない。
「ていうか弓ちゃん、どうしたの? 目ぇ悪くなったの?」
「いんや? 両方2.0」
「すごいや」
「レーシックしたら4.0になっちゃうね!」
「ならないから。ていうか、だったらなんでメガネ?」
「見て見て! 星型サングラス! 似合う?」
「聞けよ」
天弓は鏡で顔とサングラスの相性を確認する。
「もしこの先さ、私たちがメジャーデビューとかすると仮定するじゃん?」
「うん」
「バンバン売れまくっちゃうじゃん!?」
「だといいね」
「そしたらそんときさぁ! 変装グッズがいるじゃんね!」
「いるかなぁ」
「モブ顔のはっちゃんはともかく」
「顔面変わるまで殴るぞ」
一連の会話でお分かりと思うが。
そう。二人はインディーズ女子高生音楽グループ
『月極バンド』
のメンバーなのである!
天弓がドラムではじめがギター。
ちなみにバンド名の由来は全員が『
残りのメンバー。ベースの
ボーカルの
なので今は二人しかいない。
「でもさ、メガネってさ」
「うん」
「実は言うほどメガネON-OFFで『誰この人すっごい美人! え!? 美代子!?』みたいにならないけどさ」
「美代子 is 誰」
「でもやっぱり『存在』が変わるよね」
「存在?」
現在天弓はフレームの色でお悩み中。
「うん。たとえば、顔のよさでいうと他ヒロインと遜色ないキャラがいるとするじゃん?」
「あぁ、女の子いっぱい出てくるタイプの」
「でもメガネは不人気」
「メジャーデビューする気なら、発言には気を付けようね」
「でさ。ラブコメだとそういうヒロインが、デートでコンタクトにしてくる回あるじゃん」
「あるね」
どうやら黒やシルバーよりは赤や青のフレームが気になる様子。
「ああいう時、読者の反応は絶賛と『作者殺すぞ』に別れるじゃん」
「過激派はいるよね」
「ショートヘアのキャラを未来編とかでロングにすると大体絶賛の嵐。逆に散髪させちゃうと殺意の嵐。大体どっちかが多数派なのに、メガネは釣り合うっていうか。なんというか、どっちの派閥も声デカいってか」
「半分以上弓ちゃんの主観だと思うけど、少しそういう印象あるね」
「男子はロング好きすぎる。髪洗うの大変なんだぞ殺すぞ」
「落ち着いて」
形はレンズが長方形のものがいいらしい。
「そういえば、ああいうキャラはなんでレーシックしないんだろう」
「お金。あとメガネキャラがメガネを手放すのは、バトルマンガで腕を失うレベルなんでしょ」
「それでいうと、アレは天津飯なのかな?」
「は? 何が?」
天弓の目が、紫レンズのイカついコーナーへ。好きそうではある。
「そんなふうに荒れるメガネもさ。アレじゃん。普段メガネじゃないキャラが本読む時だけ掛けるとかいうシーン。あの時だけは満場一致で色気アイテムになるじゃん」
「あー、そうかな、そうかも」
「てことはパワーアップアイテム! メガネ喪失が腕欠損なら、メガネプラスは腕が生える! 天さん!」
「『ドラゴンボール』の話ね」
「でも天さんあんま強くないよね」
「自分で盛り上げといて、なんてこと言うの」
会話の着地点が見えず、だんだんメンドくさくなってきたはじめ。
スマホで時間を見ると13時まえ。
「ねぇ弓ちゃん。そろそろ決まりそう? まだ悩むなら先にお昼食べない?」
「待って! いいの見つけた! これが私に似合うなら決まり!」
天弓ははじめから見えないようにメガネをかける。
そして勢いよく振り返った。
「じゃーん! まん丸デカレンズメガネ! どう!?」
満面の笑みの彼女を、腕組み吟味したはじめのコメントは
「……なんか弓ちゃんがそういうの掛けてると、
「そりゃ色眼鏡だよぉ」
「『色』は前回のお題だよ」
メガネキャラは不人気の夢を見るか 辺理可付加 @chitose1129
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