カエルかメガネ
坂本 光陽
カエルのメガネ
夢かと思ったが、まぎれもない現実である。一生に一度の幸運、それともモテ期の到来か? いまだに信じられない。彼女は僕にとって、まぎれもなく女神だった。
日常生活は一変した。これまではモノトーンだったのに、周囲は鮮やかな色にあふれていた。人生バラ色というものが実際にあるとは思わなかった。
だが、野球のボールがすべてを変えてしまった。公園の近くを歩いていると、小学生の打ったボールが飛んできて、僕の顔を直撃したのだ。
軟式ボールなので、命にかかわるようなことはない。ただ、メガネフレームは真っ二つに折れてしまった。長年愛用してきたので、知らない間に経年劣化が進んでいたらしい。
翌日のデート中、信じられないことが起こった。彼女からあっさりふられてしまったのだ。心当たりは全くない。出会ってすぐに、突然別れを切り出されたのだから。
あなたは「
友人から信じられない話を耳にした。僕が振られた理由は、メガネにあるというのだ。彼女が僕を好きになったきっかけは僕のメガネであり、そのメガネをかけているというだけで僕と付き合っていたらしい。
そういえば、壊れてしまったメガネは逆ナイロールという、少し変わったデザインだった。ブームが終わったのか、最近はめったに目にしない。一時期はアニメキャラがよくかけていたものだが。
別れのデートの日、僕は予備のメガネをかけていた。逆ナイロールとは違うメガネを目にしたとたん、彼女は僕に幻滅したのだろう。
僕は不思議な感覚にとらわれた。怒りよりも戸惑いの方が大きいが、妙な納得感もあった。彼女が僕みたいな奴に告白するなんて、本来ならありえない。おそらく僕は、逆ナイロールのメガネより存在感がなかったのだろう。
つまり、彼女のメガネに適わなかったのだ。
カエルかメガネ 坂本 光陽 @GLSFLS23
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