色眼鏡

奈那美(=^x^=)猫部

第1話

 遠藤君と連絡先を交換した私は、スマホをポケットに入れながら教室に向かった。

(そういえば遠藤君、スマホの連絡先交換するって言ったらビックリしてたみたいだけど。クラスメイトなんだし、別に普通じゃないかな?……まあ、がなかったら交換してないかもしれないけど)

 

 教室に入ると、みはるたちがなんだか盛り上がってる。

「なに?なんか面白いものでもあるの?」

近づいてみると、机の上に一冊の本が置いてあるのが見えた。

「この本?面白いの?」

手にとって見ると、それは女子スポーツ選手が書いた本だった。

 

 「……彼女がいます?」

タイトルを声に出して読んでみた。

──なんて勇気があるんだろう、この人。

「そ!さっき倫子みちこが図書室に行って見つけたんだって。ウケるから借りてきたっていうけど、マジにウケる」

 

 「ウケる?」

「だって女なのにがいるっていうんだよ?ウケるっていうかキモいでしょ」

「……でも、そういう人もいるって授業で習ったでしょ?キモいは言い過ぎじゃないかな?」

「あ~あの、なんだっけ?LGBなんちゃらってやつでしょ?アレって、なんなんだろうね?一種のビョーキ?」

 

 「ビョーキなんて。そういう言い方はないと思うよ?その人たちもいろいろ苦しんでるかもだし」

「それはそうかもだけどさ」

「それに相手の人がそれでいいって納得してくれているならいいんじゃないかな?と思うよ。恋愛はふたりのものだし」

 

 「それってさぁ、正論とは思うけどKYだよ?あ~あ、なんか冷めちゃった。せっかく盛り上がっていたのに」

「ごめん……でも差別みたいなのってなんだかなって思ったから」

「……いいよ、もう。悪気ないのはわかってるから。倫子、本返しに行こう」

 

 ふたりは本を持って図書室に行くようだった。

放課後にでも、借りてみようかな。

遠藤君が──色眼鏡でヒトを見る人じゃなくてよかった。

 

 ポケットの中のスマホをそっと握る。

スマホの中の連絡先が、お守りのように思えた。

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