リオ

後ろからついてくる何者かの気配が気になったが振り返るのも面倒になり、そのまま歩き続ける。

「気づいてるんでしょ?」

後ろを着いてくる少女はそう言ってアリスを呼び止めた。

「殺意でもあれば振り返ってやってもよかったんだがな」


「殺意とかほんとにあるの?信じられない」

「じゃあなんで気づいてるってわかった?」

「...」


強い風で巻き上がる砂埃がとにかく鬱陶しい。ここまで風が強いのは滅多にない。何ヶ所もほつれが見られる、みすぼらしい服を着た少女は、「かわいそう」という言葉が最もよく似合う見た目をしていた。


髪もぼさぼさで肌は砂による影響か、かさかさに荒れてまるでトカゲの皮膚のようだった。

ところが、その瞳だけは不思議な輝きを放っていて、真珠のように一際煌めいていた。


「わたしもついていっていい?」

「お前、さっきの集落の子供だろ。親が心配するぞ、早く帰れ」


そう言うと、少女の顔が少し曇った。


「いいの、あそこはきらいだから」

俯きながらそう呟く少女からは、果てしない負の感情が滲み出ていた。その齢で既にこの世に絶望しているような、生きることへの執着がないような、そんな、どこか達観しているような雰囲気が見て取れるようだった。


きっとこのままここへ放置してもこの少女は集落は戻らず死ぬだろうという直感があった。

「...わかった、いいぞ。ついてこい。足手まといになるようなら置いていくからな」


そういうと少女の目に少し光が戻った、かと思えば走り寄ってきて、たちまちアリスの横に並んだ。

2人は果てない砂の大地の中を、西に沈みゆく太陽に向かって再び歩き始めた。


「お前、名前は」

「...リオ。苗字はないよ」

「...そうか」

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盲目飛行 わちお @wachio0904

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