いろいろな武器を並べた殺人
ヤミヲミルメ
いろいろな武器を並べた殺人
親愛なる我が読者よ!
因習島で事件の謎を追っていた私たちは、いきなり異世界転生してしまった!
というのは冗談だが、今回の殺人事件で使われた凶器はまるでファンタジーゲームのようだ。
島の伝承をもとに宝探しをしていた梅本は、今は空き家となった屋敷の鬼瓦に秘密があると突き止め、一人で屋根に上り、転落死した。
これだけ聞くと事故のようだが、しかし屋敷にはこれが殺人であることを示す痕跡があった。
さて、誰がどんな方法で梅本を殺害したのか?
今回もクイズ形式だ。
容疑者と凶器を同時に紹介しよう。
容疑者その1 綿谷
島祭りでわたあめ屋をやっていた青年だ。
わたあめ屋だから綿谷なわけじゃないぞ。綿谷という名字だから、祭りの委員会の会議でわたあめ屋を割り振られたんだ。
梅本のかつての宝探し仲間。
六年前に梅本の一家が島外に引っ越して以来、梅本と疎遠になったと綿谷は話しているが……
梅本にはほかの宝探し仲間とは頻繁に連絡を取り合っていた形跡がある。
梅本の遺体が発見される直前、綿谷が西洋風の両刃剣を持って事件現場の近くをうろついている姿が目撃されている。
容疑者その2 垣尾
島祭りのかき氷屋。なった経緯は綿谷と同じ。
宝探しの仲間だった点も綿谷と同じ。
島外に渡った梅本が、うさん臭い骨董屋で働いていることを気にかけていた。
垣尾の祖父いわく、先祖の掛け軸の修理を梅本に依頼したら偽物とすり替えられたらしい。
垣尾は梅本を信じたかったようだが、真偽は不明。
梅本の遺体が発見される直前、垣尾が槍のようなものを持ってうろついている姿が目撃されている。
容疑者その3 酒井
島の酒屋。宝探しの仲間。
かつては島の古老から宝の伝承を聞き出すために親の店の酒を勝手に持ち出すなどの悪さをしていた。
梅本が引っ越すと、酒井は店を継ぐための準備に入り、仲間たちもそれぞれに仕事を始めた。
梅本の遺体が発見される直前、酒井は斧を持ってうろついていた。
容疑者その4 花田
島祭りのために島外から来た花火師。
もともとはこの島の出身であり、彼も宝探しの仲間だった。
梅本の遺体が発見される直前、花田は弓矢を持ってうろついていた。
お気づきだろうか?
ここまでに上げた四人全員、初日の爆弾事件で犯人からの手紙を仕込まれた人たちだ。
綿谷が緑、垣尾が黄色、花田が赤、酒井は青のコードを切れという指示だったな。
容疑者その5 崎原
花田の祖父。
垣尾の祖父の友人。
竹宮の母方の祖父でもある。
梅本の遺体の第一発見者。
事件現場である空き家の、隣家の老人だ。
老人は杖を手に、隣家の庭先からずっとこちらの様子を見続けている。
容疑者その6 大松レイ子
島の権力者である大松家の令嬢。
かつて宝探しに熱中していた大松お坊ちゃまの伯母。
大松お坊ちゃまは五年前から行方不明で、殺されている可能性が高い。
大松レイ子は毒針を手に、私の真後ろにたたずんでいるが、それは今は気にしないでおこう。
梅本を屋根から落として殺したのは誰か?
それはいかなる方法でなされたか?
シンキングタイム・スタート!
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正解発表。
謎を解く手がかりは、六人の容疑者が持っていた武器にある。
綿谷が持っていた剣は、島祭りで売られていたビニールのおもちゃだ。
事件とは関係ない。
垣尾が持っていた槍のようなものだが、正体は祭りのテントのポールだ。
会場に一本だけ置き忘れられていたものを片付けていたんだ。
酒井の斧。斧ではなくハンマーならば、酒樽の蓋を割るのに使うな。
いずれもファンタジーゲームではそこそこ見かける武器だ。
花田の弓矢。これは殺人に使えそうだ。
被害者に直接矢を当ててもいいし、足場を壊すこともできる。
当たらずとも被害者のそばを矢がかすめるだけでも被害者がバランスを崩して屋根から落ちる可能性はある。
だが、現場付近で矢は発見されなかった。
崎原の杖。
うん。
いかにもご老人が使いそうな杖だ。
火の玉が飛び出したりはしない。
大松レイ子お嬢様の毒針は……
護衛のために雇った私が別の事件の捜査ばかりしているので、仕方なく自衛のために持ち歩いているのだそうだ。
ああ、お嬢様、怒らないでください!
この事件の謎は、お嬢様が受けた脅迫にも繋がってきますから! きっと……たぶん……
さて、殺人事件の犯人がいかにして梅本を屋敷の屋根から落としたかだが……
家の柱を切ったんだよ。斧で。
ほら、柱に痕跡がある。
犯人は斧を持って現場付近をうろついていた酒井だ。
調べれば柱の痕跡と斧の形状が一致するだろう。
いろいろな武器を並べた殺人 ヤミヲミルメ @yamiwomirume
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