KAC20247 強者の悩み。

久遠 れんり

第1話 世界はある日、変わってしまった。

 あれは、小学校五年生の時。


 一応十字路だが、大きめの道路が丁字にぶつかる、変則な道路。

 少し狭いこちら側の道路は、奥へ行っても住宅地にぶつかる。

 そのため、車があんまり来ない。

 でも、しっかりと、そこに描かれている横断歩道。

 むろん。歩行者用の信号もある。



 ここは、中学生や大人達でも、信号を守らないことがある。

「信号は、守らないといけないよ」

 あの時まで友達だった彼らに、声をかける。

「面倒だな。お前は真面目君か?」

 たしか、そう言っていた。


 そう言いながらも彼らは待ってくれて、歩行者側が青になった時。彼らは、確認もせずに短い横断歩道に飛び出す。


 横を通る、四車線の道路。

 向かい側に止まっていた右折車が、信号が青になるかならないかで、いきなり曲がってくる。

 そして、僕の目の前で飛び出した彼らは、跳ね飛ばされた。


 それから、そう俺は……

 なぜか虐められる事になる。

 命は助かったが、一人は膝を砕き傷害が少し残った。


『もう全力疾走が出来ない。信号を守らせたお前が悪い』そう言って。

 大人達の話では、少しでも早く。

 そんな考えで、曲がってきた車が悪いといっていた。

 その人は、急いだ事にたいした意味はなく、幾台かの車が通り過ぎる時間。それを待つのがいやだった。そんな理由だったらしい。


 日々虐められる生活の中で、僕は、正しいことは、時に間違いなのかと考える事になる。


 そして、それから五年が経ち、高校生になった頃。七つ、色のちがう隕石が降った。

 その後、落下地点だけではなく、地球はすっかり変わりモンスターが跋扈をする世界になった。


 そして一年後の今。高校二年。


 ある日の学校からの帰り道。


 目の前で、モンスターに襲われる。もと友人たち。

 彼らの一人が、振り回していた靴は俺のだろう。

 モンスターに驚き、手から離れた靴は飛んでいく。落下地点を予測して、空間魔法で捕まえる。


 見ると、きっちりと結ばれ、両足分が繋がっている。

 まるで、狩りに使う道具。ボーラの様だ。


 金属を生成して、尖らせる。

 それを使い、きっちりと結ばれた紐をほどく。

 紐をほどき、上履きと履き替える。

 聖魔法の無駄遣いでクリーンを掛け、綺麗にする。

 そこまでして、ふと見ると彼らは、デスボア一匹に追いかけ回されている。


 ふと目が合うと、彼らは言う。

「助けてくれ」

 そう言って懇願をする。


 一応、体に魔法を発動させる七色の光を纏い。そのまま俺は考える。どうするのが、正解なのだろうかと。


 ハンター協会の規定により、非常時以外で攻撃魔法の使用は禁じられている。

 だから一般の人は、生活レベル以上の魔法は、きっと見たことがない。


 見たとしてもテレビや、ネットの動画だろう。

 まあ、体長二メートルくらいのデスボア一匹なら、魔法も必要ないが。


 そこに着信が来る。

「あっ。神薙さん。その辺りにデスボアが居ませんか?」

「一匹いるよ」

「倒してください」

「わかった」

 住宅地なので悩む。


 仕方が無いので、鼻っ面で転がされ、遊ばれている奴らを、巻き添えにしないように、普通に歩き近付く。


 弱点である、脳天に拳を落とし、それと同時にかに雷を通す。


「うーん。終わったよ」

「流石ですね。担当者を向かわせます。座標はそのスマホの座標で良いですよね」

「いいよ」

 通話を切ると、彼らは信じられないものを、見たとでも言うように固まっている。


 五分もせずに、軍の車両と、協会の車がやって来た。

 異変が起こったどさくさで、自衛隊は、軍になった。

 警察では手に負えない異変。反対は多少あったらしいが押し通した。


「お疲れ様です」

 大人が俺に対して頭を下げる。


 ハンターレベルは、階級と紐付けされている。

 今俺は、中佐。佐官だ。

 独立法人、ハンター協会。法人だったり協会だったりするが、日本の場合、新規に作られた軍の対モンスター特務隊が元となっている。


 魔法に目覚めた一般市民をえるため、法人化して独特の裁量労働制を取っている。


「えと、仁志って何者なんですか?」

「はっ? ああそうか、一般人に秘匿なのか」

 端末を操作する。


「特に制限は規定されていないようなので、彼は我々の上官で、この地域のトップハンターです」

「トップハンター?」

 彼らがそう聞くと、誇らしそうに彼は答える。

 二月前、ケルベロスが現れ、国民合わせて一五〇名ほどが被害にあった事件。

 聞いたことがったのだろう。ああ、あれかという感じで思い当たったらしい。


「武器が効かず、被害が拡大する中。中佐が現れ、わずか三〇分で退治をされたんです。いやあ、あの戦闘はすごかった」

「ええっ」


「君達同級生かい。うらやましい。中佐が居ればきっと一番の安全地帯だ。よかったなあ」

 そう言って、その兵はデスボアのトラックへの積み上げに行ってしまった。

 ワンパンで頭蓋骨が砕けている。彼らはそれをずっと眺めていた。



 それから、なぜか、あれだけしつこかった、いじめがなくなった。

 最近忙しくて、なかなか学校に来られないが、平和に卒業まで暮らせそうだ。

 

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KAC20247 強者の悩み。 久遠 れんり @recmiya

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