彼女を、彩るのは。

うびぞお

お題「色」 怖い映画を観たら一緒に夜を過ごそう 番外編

「あれ?この映画、白黒なのに古くない」


 テレビに流れた何かの映画の予告と上映年を見て、2000年台の映画なのに白黒なのに気付いた。白黒映画=古い、というのがわたしの印象イメージだ。


「映画は1940年頃からカラーです。昨今、あえて白黒で撮ったり途中で白黒がカラーになったりする演出は珍しくありませんよ」

 彼女はこともなく言う。彼女に会うまでろくに映画を見てなかったわたしは知らないことばかりなので、映画知識を山ほど持ってる彼女は色々教えてくれる。


「ね、そういう知識、いつ学ぶの?」

「白黒でも古い映画とは限らないって知識ですか?」


 彼女の瞳が揺れて脳内映画検索をしてるのが分かる。

「中学の時に80年代の映画を観て、それが白黒だったんで分かりました」

 どういう中学生かと戸惑いつつも、さらに尋ねる。

「で、それはどんな映画だったの?」


「生まれつきの病気による外見のために見世物小屋で晒し者になっていた男性の物語でした。真に醜悪なものと美しいものとは何か、そして救いとは何かを問うてきます。その頃は子供だったので、ラストの切なさに胸を打たれただけでしたけど」


 薄い微笑みを浮かべて映画を語る彼女は綺麗だけど、わたしを見てるようで見てないから、少し寂しい。

 にしても、それって中学生の見る映画なのか疑問。


「前は、そういう映画も見てたのに、なぜ今はホラー専門なのよ?」

 ちょっとあてこすると、専門じゃないと彼女は苦笑いする。わたしにしてみたら十分専門家だわ。


「その映画、特殊メイクもあるし、ポスターがホラー風味テイストだったのでホラーだと勘違いした、のと」


 と?


「主演俳優が、かの有名な異星人エイリアンに殺された記念すべき最初の地球人の俳優さんでして」


 そう言って、彼女の頬がぽっと薄紅に色付く。

 なぜ、そこで照れるのかが分からない。それに何の記念なのかさっぱりだ。でも、




 その色が愛おしくて見惚れてしまう。







 ★☆

 ネタにした映画「エレファント・マン」「エイリアン」


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