麻雀はカラフル  KAC20247

愛田 猛

麻雀はカラフル KAC20247

東田圭吾、南野洋一、西川敏行、北見武の四人は、東田のぼろアパートで麻雀をやっていた。

四人は貧乏学生なので、雀荘で場代を払うのがもったいないと、東田の四畳半一間の部屋でのこたつで、手積みで麻雀をやっている。


雀荘にいけば全自動で牌が並べられるが、手積みだとその分時間が少しかかるし、イカサマもやろうと思えばやれる。


四人は長い間の麻雀仲間で仲良しだが、麻雀に関しては厳しく容赦ない。だが、それこそが真の仲間だ、ということでもあるのは、勇者パーティーなんかと同じだろう(?)。


南野が言う。「おい東田、何とか全自動麻雀卓買えないか?まあ、金ならみんなで出し合えばなんとかなるんじゃないか?」



西川も言う。「密林の通販で見ると、中古なら8万円くらいだな。一人2万だっせばいけるぞ。」


北見も言う。「まあ予備の牌も買っとけよな。全自動だと、茶色い牌と青色の牌があるから、両方な。」


 東田はちょっといらだつ。「お前ら勝手なことを…。だいたい、全自動なんかおいたら寝る場所もなくなるし、壊れても面倒だろ。北見は自宅なんだから置けないのか?」


「そりゃ無理だ。ただでさえ留年しそうで親父が真っ赤になって怒ってるのに、自宅に麻雀卓なんか置けるわけないだろ。」


それもそうだ。ほかのメンバーのアパートも似たようなものなので、この話は立ち消えになる。

まあ、三回に一回はこの話が出るんだが。


「手積のよさだってあるぜ。阿佐田哲也の麻雀放浪記にもあるだろ。二ノ二の天和(天ホー)とかな。」

東田が言う。これは高度なイカサマの一つだ。ちなみに阿佐だ哲也というのは、麻雀で徹夜して「朝だ。徹夜した。」というところから取ったペンネームらしい。


「さすがに、あんなのとか燕返しとか、できるわけないよなあ。物語の脚色さ。」と南野も言う。


「話は変わるけど、麻雀って色が多くてカラフルだよな。」東田が言う。

「そうだな。白、緑発、紅中とあるもんな。あ、白ポン!」


南野が白をポンして一萬を捨てると、西川が叫ぶ。

「よーし高めだ!平和(ピンフ)三色に赤5筒で満貫!」



彼らの牌には「赤5筒、赤五萬、赤5索が含まれていて、それらがあると高くなるのだ。


南野がが悔しそうに八千点の点棒を西川に払う。


次の局、北見が動く。「青ポン!」

東野が言う「そういえば、青って言うけど緑だよな。緑発だし。」



「そんなの、信号の青と緑と同じようなもんさ。あ、2筒でロン。青と混一色(ホンイーソー)で点パネして5200!」


東田が北見に5200を払う。


「そうだな、麻雀はカラフルだな~一色に染めてもな。」北見が笑う。


南野が言う。「まあ、意外に出ない三色同刻なんてのもあるしな。」

「三色同ポンかあ。ま、あまり意識して作る役じゃないよなー。あ、八索チー。」北見も同意しつつまた鳴く。


「お前、また染めてるのかよ。」東野が言う。


「さあね~単なるタンヤオのみかもよ~あ、三索ポン!」と北見。


「見え見えじゃねえかよ。じゃあ赤5索先に切っとこ。」さっき振り込んだ南野が言う。


「ローン、清一色(チンイーソー、チンイツ)に赤で跳満!」

「ぐえっ」南野が引きつる。


「いや~カラフルだけど一色もいいよな~「北見はご機嫌である。


東野が言う。

「一色と言えば、字一色(ツーイーソー)って役もあるな。俺、一度やったことがあるぜ。」東野が言う。 「そういえば、役満は最近出てないな。そろそろ俺の番かな。ほれ三索」


その時、西川が大声で叫んだ!

「やった~!緑一色(リューイーソー)、四暗刻(スーアンコー)単騎、トリプル役満だ~!!」


場が色めき立つ。

西川の手はすべて索子で、こうなっている。

2223444666888

2索、4索、6索、8索が三枚ずつ、そして3索が一枚で、東野の3索で和了(ホーラ)つまり上がりである。


「ちょっと待て。」振り込んだ東田が言う。

「お前、これ発がないだろ。これは緑一色とは認めん!」


「発なしでも緑一色は緑一色だ!:と西川は主張する。


ほかの2人はと言えば。「うーん。発なし緑一色はダメじゃないか~」「発があるから緑一色って気がするな。」という感じで、どうやら話は通らなさそうである。基本的にルールは多数決なのだ。


「まあいいや。それでも四暗刻単騎だ。ダブル役満だ。あ、タンヤオもついてるが、それはおまけしてやる「と、それでもご機嫌な西川が言う。


そこへ南野が口を出す。

「あれ~。西川、トリ切ってるじゃん。」


西川の顔色が変わる。

トリとは1索のことだ。


東田が勢いこむ。

「お~。これ、フリテンだ。チョンボだチョンボだ、お前のミスだから満貫払いな~あ~助かった。」


「俺はトリなんか切ってない!何かの間違いだ!」西川が抗弁するが、ほかの3人は聞かない。

「ほら~満貫払え~」と3人が迫る。


「くっそ~!!!」色を失った西川が吠える。


その横で、南野がほくそえんだ。

実は、西川が興奮しているときに、南野がこっそりと捨て牌をすり替えたのだ。


(興奮して、あたりの景色を見てなかったのが敗因だな。ふっ。西川。まだ青井ぜ)「


四人の麻雀は続く。


(完)





===

麻雀のルールを知らないかたには難しいでしょうけど、まあそれはそれとして。

高校のとき、「発なし緑一色を認めるか」という議論をしたのを思い出して書きました。


パソコンで「すーあんこー」とひらがなで書くと四暗刻と変換されるのに驚きました。


私は書くことをを逃避して、マルジャンという有料麻雀ゲームをやることがあります。

というかもう十数年やっていて月に一万円で…(ぐほっ)



お読みいただき、ありがとうございました。

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特に短編の場合、大体が一期一会です。


袖すりあうも他生の縁。

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…もちろん私が最初に幸せになるんですけどね(笑)。

















阿佐だ哲也先生の本名は「色川 武大」(いろかわたけひろ)です。

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