真夏の暑さより暖かい

@mokuba3

ビアガーデンの思い出

 泥酔してゲロ吐いた人はたくさんいるだろう。


 記憶を無くすまで飲んだ人もたくさんいるだろう。


 僕は泥酔したときウンコまで漏らすことがある。それが死ぬほど恥ずかしい。


 真夏の札幌では毎年大通り公園でビアガーデンが開かれていた。

 札幌市を横切る広い区域に机、椅子、テントが設置されて周りには各メーカーのビールを販売する出店があり、昼間からビールを楽しむ人で賑わっている。


 ある日大学の先輩に誘われて僕はビアガーデンに向かった。

 真夏の蒸し暑い日の昼に飲むビールは美味くて皆でグイグイ飲んでいた。

 いつの間にか先輩がナンパしてきた女性と慣れないながら頑張って喋ってみたり、いつものように先輩達とくだらない話をしている間に日が暮れて、辺りは暗くなっていた。


 ビールをいっぱい飲んだため小便が近くなった僕が何度目かのトイレに向かったとき、急ごうと小走りで向かっている途中で足がふらっとして、まずい、飲みすぎたなと思ったところで視界がななめになって


 そこから記憶がない。


 気づけば自分のアパートの部屋、ベッドで寝ていて隣で友人がゲームをしていた。


 どういう状況か悩んでいると、友人は「あ、起きた?大丈夫?じゃ俺帰るわ~」とさっさと帰った。


 たぶん転んで気絶したんだろう。飲み過ぎてたし。申し訳ない事をした。


 それより大事な事がある。

 そっと自分のパンツの中を探った。

 よかった、漏らしてない。


 ほっとして、まず小便しようかとトイレに入った。


 トイレにはウンコまみれのパンツが一つ、置かれていた。


 冷静に記憶がない間の事を推察した。

 友人は気絶した俺をアパートまで運んでくれた。その間にウンコ臭い俺に気付いて、ああ漏らしてんなコイツって思ったんだろう。

 そのままにしておくのはかわいそうだから履き替えさせてくれたんだろう。

 履き替えさせてくれた友人、本当にありがとう

 何も言わずに帰った優しさに暖かいなと思った。


 しかし僕は死ぬほど恥ずかしい思いでいっぱいだった。


 そして先輩に連絡して今日はすいませんでしたと謝罪してまわった。


 すると「お前倒れてたところ通りすがりの看護婦さんたちに介抱されてたんだよ、救急車呼ぶかって話だったんだけどさ」という。


 偶然にたくさんの人の暖かさに触れた日らしかった。


 あの日の皆様ありがとう。


 僕はいつから漏らしていたんだろう。

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