【KAC20248】 メガネをかけた猫
小烏 つむぎ
メガネをかけた猫
「マロン、マローンちゃん! 下りておいでよ」
特にこの一ヶ月、
「マーローンー、ねぇ、マロンさんってばぁ」
マロンはふいと顔をそむけると、前足に顔を埋めるようにして
◇ ◇ ◇
美鳥は後ろ手におもちゃのメガネを隠しつつ、マロンを何度も呼んだ。しかし正しく猫であるマロンは飼い主である美鳥の呼ぶ声を見事に無視した。
「ダメかなぁ。マロンのメガネ姿、超絶可愛いと思うんだけどなぁ」
美鳥はため息をついて手元のスマホに目をやった。そこにはメガネをかけた可愛いペットや小さな子ども、お祖母ちゃんの写真が並んでいた。ここのところ「お題」を出してその「お題」に沿った写真をアップするのがネットの仲間うちで流行っているのだ。
先週の「お題」は「箱」で、お気に入りの箱から後ろ足と尻尾をてろりんと出したマロンの写真が一番たくさんの「イイね」をもらったのだ。これに調子づいた美鳥は今回もメガネ姿のマロンで「最多イイね」狙っている。
なんとかマロンにメガネをかけてもらおうとあれこれ誘ってみるのだが、マロンは本棚から下りてくる気配はなかった。
かくなるうえは最終手段かと、美鳥は筒状レトルトパックに入ったかの有名な猫用液体おやつをポケットから出した。
◇ ◇ ◇
マロンはふいに、とてもとてもとても良い匂いに誘われて顔を上げた。
『あれは、たまにしかもらえない最高のおやつ!』
マロンは
『ねぇ、ねぇ、ねぇってばぁ』
◇ ◇ ◇
美鳥はしてやったりという笑顔を浮かべながら、片手に液体おやつを持ってマロンの顔を少し上向きに誘導した。そうして素早くおもちゃのメガネをマロンの顔に乗せると手慣れた早さでスマホを持ちシャッターを切った。
液体おやつに夢中なマロンはメガネを気にする様子はない。美鳥は二本目の液体おやつを差し出しながら、シャッターを切り続けた。
美鳥渾身のメガネをかけた
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