伝説のアラキン!!
辺理可付加
戦慄! “妖艶なるミールン”!
『新しい国へ着いたぜ』
『早くお宿を決めて、熱い湯船に浸かりたいですわ』
『それにしても、この国の城壁はモノトーンで、シックな美しさがありますね』
『いや、待て僧侶ミポーン! そうじゃねぇ!』
『どうしたんだ戦士ジローボ!』
『勇者アラキン! 空を見るんだ!』
『空ですって? まぁ!!』
『気付いたか魔法使いヤッチー』
『空が、いえ』
『空まで白黒ですわ!!』
『いったいどういうことなんだ!?』
『あのー、もしかしてー、勇者さまご一行ですかー?』
『君は?』
『私はこのアムー国に住む花屋の娘、トヨと申しますー』
『トヨちゃんか。いかにもオレたちは、ヒューガン国王の命で魔王を討つべく旅をしている勇者一行だ』
『やっぱり! お願いです! 私たちを助けてくださいー!』
『事情を聞かせてくださいまし』
『はい。この国も、元々は色があったんですー。むしろ花は咲き乱れ、草原は青く、峰々は季節に移ろう。世界でも有数の景勝地でした』
『そういえば、神父さまがそうおっしゃっていたのを聞いたことがあるわ』
『それがある日のことですー。魔王軍四天王が一人、“妖艶なるミールン”が国を襲ったのです!』
『なんだってぇ!? そいつは大変だぁ!!』
『ミールンは瞬く間に、国中の“色”を奪ってしまいました』
『なんということでしょう』
『くっ! 国の誇りとも言える美しい景色を奪うなんて許せんっ!』
『フハハハハ! よく来たな勇者ども!』
『誰だっ!』
『我が名は魔王軍四天王が一人、“妖艶なるミールン”!』
『貴様がミールンか! なぜこんなことをする!』
『知れたこと! 私の人生には“色”がなかった!』
『妖艶なのにか!』
『ずっと独身で彼氏ができたと思ったら寝取られる! 私は“色”が憎い! 羨ましい! 妬ましい! もはや若干怖い!! だから世界で最も美しい色を奪ってやったのだ!!』
『なんて自分勝手で哀れなやつなんだ!』
『そんなだからモテないのよ!』
『精神が澱んだ色してますわ!』
『なんとでも言え! そんなチクチク言葉、私にはもう効かん! 私を倒すには“色”しかないのだから!!』
『なんだと!? 色!?』
『そうとも! 色だ! この国に色が取り戻されたら、私の目は耐えられずに滅び去るだろうがな! 例えば読者の熱い要望によるカラーページとか週刊少年チャンプの表紙とかカラー色紙企画とか!!』
『くそっ! なんということだ! マンガは基本白黒だからどうしようもない!』
『しかも今のはオレたちじゃどうしようもねぇ! 読者のみんなのお便りで編集部を動かさねぇと!!』
『イヒヒヒヒ!! このマンガはもう数えている限りで20週以上カラーをもらえていない! アンタらにアタシを倒す手段はない! 覚悟するんよー!!』
『あなたそんなしゃべり方じゃなかったでしょ!』
『登場キャラの口調すらブレブレだから人気が出ないのですわ!』
『しかもなんかちょっとパクリくさいですー!』
『チクショウ! どうすんだアラキン!』
『くそっ、ピンチだ! 読者のみんな、ミールンを倒すためだ! オレたちに力を貸してくれー!!』
「へへへ、これで来週の巻頭カラーはイタダキなのよー!」
「無理やと思いますよ、先生」
「編集長、のよ田先生から今週の原稿が」
「ん」
「……」
「どうですか? その」
「カラーがどうとか言ってんな」
「はい」
「四天王だろ? 登場してすぐ倒したら話にならん。短くても5週は先だな」
「あれっ? でも」
「なんだ?」
「昨日『のよ田先生のは打ち切りにするから、来週あたり伝えて2、3週でたたませろ』とか言ってませんでした?」
「そうだっけ?」
伝説のアラキン!! 辺理可付加 @chitose1129
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