引き出しは開けないでください

羽間慧

引き出しは開けないでください

 私を構成する大部分は、書籍とアニメ関連の供給である。


 アンパンマン、おジャ魔女どれみ、明日のナージャ、美少女戦士セーラームーン、ポケモン、カードキャプターさくらといった幼少期は、一人っ子の特権を使って親や祖父母に買ってもらっていた。高校生のときは父の影響でガンダムを履修し、一回分のお金を握り締めて一番くじに挑んだ。大学進学を機に最寄りのアニメイトの距離が近くなり、頻繁に通うようになった。私立高校の教師になっても。


 刀剣乱舞、文豪ストレイドッグス、五等分の花嫁の三玖、鬼滅の刃の義勇さん、東リベのばじふゆ、佐々木と宮野、ブルーロック、リコリス・リコイル、呪術廻戦のナナミン、SPY×FAMILY、あんスタの紅郎さん、水星の魔女のエランさん、推しの子の重曹ちゃんこと有馬かな、ハイキュー!!の旭さんとノヤっさん。


 思いつく順に挙げてみたが、まだまだ書き足りない。幼少期より遥かに好きな作品やキャラが増えた私は、自分にルールを課した。


 購入時に避けるもの。キャラクターのイラストを印刷した箱または缶、ぬいぐるみ類、目や口元など自分の評価基準に合わなかったグッズ。


 定期的に整理するもの。財布の中のレシートおよび鑑賞券、読んでいない書籍、使っていないシール・ステッカー類。


 その結果、厳選されたグッズと、新たに迎えるものの保存場所を確保した。


 基本的に購入したグッズは透明なケースにしまい、たまに開けて観賞する。だが、なかには使いたいグッズもある。生徒に配布するプリントを入れるため、クリアファイルは普段使いにしていた。職場のデスクの引き出しは、ありとあらゆるキャラのクリアファイルが収められた。


 そのうち観賞用にしたいクリアファイルが出てくる。幸運なことに、職場のデスクマットは透明だった。机とマットの間にお気に入りのクリアファイルを入れ、授業から帰ってきたときの癒しにした。気づいたときにはノートパソコンの周りを囲むように、同じキャラのクリアファイルが複数配置についていた。ここら辺から歯止めは消える。そもそも「生徒の個人情報にまつわる書類等は、鍵のかかる引き出しで管理する」ルールを守りさえすれば、机上の自由は許されていた。


 左右の引き出しには、右が男の子キャラ、左に女の子キャラのグッズを紛れ込ませた。中央は購入時の状態を保ったアクリルスタンドと缶バッチが鎮座した。引き出しを開ける度、推し達に和まずにはいられない。


 デスクは三玖の青で統一できているものの、引き出しを開けたら最後だ。いろんな色で埋め尽くされた、統一感のない沼が広がる。机上にアクリルスタンドやフィギュアを置いていないため、印鑑を探されたら一般人の皮が剥がれてしまう。それでもストレス緩和のために、グッズを入れておくのは止められないのである。

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引き出しは開けないでください 羽間慧 @hazamakei

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